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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第11回

GeForce 256で名を上げたNVIDIA GeForce FXでは苦戦も

2009年07月27日 13時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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斬新なアーキテクチャーを採用したGeForce FX
消費電力は大幅に増大

GeForce FXシリーズのラインナップ

GeForce FXシリーズのラインナップ

 そのNV30は、台湾TSMCの130nmプロセスを使い、2002年11月に「GeForce FX 5800」としてリリースされる。このGeForce FXの内部構造は従来までとまったく異なり、特にVertex Shaderは言わば巨大なArray Processor(並列演算プロセッサー)がひとつ入るだけといった構造になった。もっとも製品バリエーションによって、プロセッサー内の演算機は増減する。

 またPixel Shaderでは、従来はピクセルパイプラインと一体化していたテクスチャユニットが分離され、ひとつに統合した統合テクスチャユニットになった。またNV30はともかく、バリエーションモデルである「NV31/NV34/36」の場合は、動作モードによって数が変わる。ロードマップ図に示した数字は、あくまで目安である。

 NV30は登場当初、性能こそ高かったものの恐ろしく消費電力(つまり発熱)が多く、これに対処するために用意した「FX Flow」という新しい冷却システムの騒音がこれまでにないほど大きかった。到底一般家庭のパソコンに使える代物ではなかったほどだ。

GeForce FX 5800搭載カードのサンプル

GeForce FX 5800搭載カードのサンプル

業界初の2スロット型冷却機構を搭載した

業界初の2スロット型冷却機構を搭載した。消費電力と騒音の大きさは、FX 5900登場時にNVIDIA自身が自虐ネタにするほど

 当時の競合製品はATIの「RADEON 9700」だったが、性能は同等ながら消費電力ははるかに上回っている、という状態だった。ここまで消費電力が異なった大きな理由は、GeForce FXの構造が当時のGPUに必要とされる以上の機能を提供していたことにある。

 例えばPixel Shaderは、内部で128bitピクセルの表現をサポートしているが、これは当時のDirectX 9でサポートされないものだった。NVIDIAはNV30と同時に、「CineFXアーキテクチャー」やレンダリング言語の「Cg」(“C”for Graphics)などを提供し、単にパソコン上の3Dゲームに止まらず、ハイクオリティーなCG映像作成を可能にする環境を提供しようとしていた。そのため、NV30の内部構成はパソコン用には過剰なものにならざるをえなかった。

 だが、やはりいろいろ無理があったことは事実で、翌2003年5月に「NV35」が「GeForce FX 5900」シリーズとしてリリースされると、あっという間にGeForce FX 5800シリーズは姿を消してしまい、現在では半ば同社の“黒歴史”化している(特に初代のFX Flowが一番黒歴史扱いされている)。


ハイ/ミドル/ローの3層ラインナップに

 次なるNV35では、内部の小変更が行なわれるとともに、メモリーバス幅を256bit化し、それほど発熱の多くないGDDRメモリーを採用した(NV30はGDDR2メモリーを採用)。冷却機構の改善で騒音レベルを下げた事などもあり、ようやく常識的な製品に落ち着くようになる。また2003年末には、高クロック動作の選別品を「GeForce FX 5950」(NV38)として販売される。

GeForce FX 5200のパッケージ

GeForce FX 5200のパッケージ

 さて一方のローエンドだが、NVIDIAはこのGeForce FXの世代から、ハイ/ローの2階層にミッドレンジを加えた3階層のラインナップにしてきた。ミドルレンジには「GeForce FX 5600」(NV31)、ローエンドには「GeForce FX 5200」(NV34)がそれぞれ用意されたが、基本的にはどちらもNV30のサブセットとなる。対応するAPIもすべてNV30と同じで、ここにきてようやくバリュー市場向け製品でも、(性能はともかく)DirectX 9がフルに使えるようになった。

 NV34の方は、後に「GeForce FX 5100」や「GeForce FX 5300」という型番の製品も登場した。5100はモバイル向けには確かに存在するし、5300は後述するPCI Express対応の製品があるが、デスクトップ向けAGPバス対応の製品には、本来こうした型番は存在しない。OEMベンダーが勝手にそうした名前で製品を出してしまった模様だ。

 NV31に続き、2003年10月には「GeForce FX 5700」(NV36)が登場するが、これの最大の変更点はファウンダリー(製造業者)。これまではファウンダリーにTSMCを使ってきたNVIDIAだが、130nmプロセスの性能があまりあがらないという問題を抱えており、ファウンダリーの変更を真剣に考慮していた。そこで試験的に、NV31をほぼそのままIBMでの製造に移行したのがNV36、という事になる。

 この結果が良好だったため、これに続く「NV40/41/45」では全面的にIBMに生産を移管することになるが、このあたりは次回で触れよう。一方ローエンドもNV34から「NV34B」に変更されるが、こちらは本当にマイナーチェンジである。

 GeForce FX世代のもうひとつ特筆すべき点は、PCI Expressへの対応である。とはいえ、まだこの世代ではPCI Expressのコントローラーを内蔵した製品はなく、GPUとPCI Expressバスの間に、AGP/PCI Expressブリッジチップを搭載して対応した。

 製品としては「GeForce PCX 5300」(NV34+ブリッジ)、「GeForce PCX 5750」(NV36+ブリッジ)、「GeForce PCX 5900」(NV35+ブリッジ)、「GeForce PCX 5950」(NV38+ブリッジ)の4つが用意され、PCI Expressに直接対応したNV41以降の製品が投入されるまでの間をつないだ。

 次回はNV40世代以降について解説しよう。

今回のまとめ

・比較的新興企業であるNVIDIAは、性能の優れた「RIVA TNT」シリーズで評価を上げ、DirectX 7世代の「GeForce 256」で競合の3dfxに大きな差を付けた。

・「GeForce 3」の頃から、開発ペースが鈍る。特にローエンドは「GeForce 2 MX」とその改良版で、3年近くしのぐことになる。

・「GeForce FX」シリーズでアーキテクチャーを一新。ハイ/ミドル/ローの3層構成のラインナップを用意。しかし、先進的すぎ消費電力も大きく、苦戦も強いられる。

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