難航したGeForce 3の開発
原因はXboxとの同時開発?
翌2001年には、「NV20」を「GeForce 3」「GeForce 3 Ti」としてリリースする。実はこの直前まで、NVIDIAは“毎年2回”のラインナップ更新を宣言していた。つまり1999年後半にNV10、2000年前半に改良型のNV15が投入され、2000年後半には新アーキテクチャーのNV20、2001年前半にその改良型となる「NV25」という具合だ。
だが、このNV20の開発は結構遅れ、結果としてこのあたりからずるずると、ラインナップ更新の時期がずれ始める。GeForce 3/TiはDirectX 8.0に対応した製品となる。内容的には、NV15にHardware T&LをVertex Shaderに置き換えたような構造である。ただ、プロセスが微細化されたにもかかわらず、動作周波数はNV15と大きく変わらなかった。
お詫びと訂正:掲載当初、Harware T&Lに関する記述に誤りがございました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2009年7月28日)
そもそも「なぜNVIDIAの開発が難航したか」と言えば、この時期にNVIDIAはマイクロソフトの「Xbox」向けチップセットも開発しており、開発の人員が多くそちらに割かれていたから、という説がある。実際XBoxのGPU部とGeForce 3はほぼ同じものであり、初期の開発キットはWindows PC上にGeForce 3が搭載されたものだった。
「共通だから開発コストが抑えられるだろう」というのがNVIDIAの当初の目論見だったようだが、実際にはそれどころではなかったようだ。結果として、GeForce 3ファミリーは無印のGeForce 3と上位の「GeForce 3 Ti 500」、下位の「GeForce 3 Ti 200」がラインナップされただけで終わってしまう。ちなみにこの間、バリュー向けにはGeForce 2 MXが引き続きラインナップされていた。
GeForce 4でも停滞するローエンドGPUの更新
これらのラインナップをどうにか更新したのが、続く「NV25」ファミリーである。まず2002年2月には、Vertex Shaderを強化すると共に、動作周波数をやや引き上げた「NV25」が投入される。API的にもDirect X 8.1対応になり、Pixel Shaderの機能が若干強化されたのが、NV20との違いである(基本的には大差ない)。
このNV25、2002年9月には「NV28」となるが、これはAGP 8x対応が主眼でそのほかの機能はほぼ同じである。製品の型番でいえば、NV25が「GeForece 4 Ti 4200」「同4600」、NV28は「GeForce 4 Ti 4400」「同4800」となる。
問題はバリュー向けラインナップだ。この時期のNVIDIAには、NV25の低コスト/低消費電力版を開発するだけのゆとりが依然としてなかったようだ。2002年2月のGeForce 4 Tiの発表時に、合わせてバリュー向けの「GeForce 4 MX」もリリースされるが、これは名前こそ“GeForce 4”ながら、内部はGeForce 2 MXを150nmプロセスに微細化しただけの製品だった。ちなみに、開発コード名には「NV17」と「NV18」があるが、前者がSDR SDRAMのみのサポート、後者がSDR/DDR SDRAMもサポートという以上の違いはない。
これの何が問題かというと、結果的にバリュー向け製品が、いまだにVertex Shaderを持たないDirectX 7相当の能力しかないことだパイプラインは貧弱とはいえ、動作周波数や特にメモリーの周波数がGeForce 2 MXと比較しても大幅に向上したことで、描画性能そのものは強化されていた。しかし、機能面での不足はどうしようもなかった。
このローエンドの手の抜き方は、次に登場する「NV30」の開発を優先した事にも多少関係がある。NV30はDirectX 9をフルサポートしたまったく新しいアーキテクチャーだったが、それゆえ開発も大変だった。時期的には2001年の後半にはXboxの開発も終わっていたはずで、そこからNV25/28のサブセットとしてバリュー向けを作ることも可能だったろう。しかし、それでNV30のスケジュールが後ろにずれるよりは、早めにNV30をリリースして、そのサブセットをバリュー向けに作るという方法がトータルとしては望ましいと考えたのだろう。
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