前回「Windows 7 RCにアップデートしてみた」後で、WILLCOM D4(以下、D4)のHDDをSSDに交換する気になった。
もっとも、筆者の執筆領域はPDAやスマートフォンのソフトウェアのレビュー記事がメインで、あまりハードウェアのチューンナップ記事は書いたことがない。しかし、いくつか、写真付きで丁寧にHDDの交換方法を紹介したサイトを見付けた。
「これだったらできるかもしれない」
……と、すっかりやってみる気になった。参考にしたのは下記サイトだ。どちらも情報が充実しており、筆者はこれらに目を通すだけで問題なく交換可能だった(筆者はPCでは、メモリー交換程度しかやったことがないにもかかわらず)。
【参考サイト】
もっとも、多少難しく感じる部分もあったので、本記事ではそういったところを中心に紹介していきたい。なにしろハードディスクを交換してしまうため、メーカー保証も切れてしまう。「自分でリスクを負える」ユーザーだけが実施してほしい。また、本記事を参考に作業を行って何らかの事故等が発生した場合、筆者/編集部/メーカーともに、なんら責任をとることはできないことも書き添えておく。
道具の準備
D4に搭載可能なHDDは、東芝製1.8インチで5mm厚(ZIFコネクタ PATA)のものとかなり特殊だ。価格の安さや速度よりはコンパクトさを重視したSSDだ。なお、8mm厚のものは使用不可能だという。そこで今回はフォトファースさんからお借りしたSSD「PhotoFast PF18Z64GSSDZIF」(64GB)を使用した。実勢価格は3万円弱。近々同タイプでリビジョンの上がった製品が準備されているらしい。
工具には、やや特殊なドライバーが必要。星形のT5サイズのトルクスドライバーと、0サイズの+ドライバーだ。細いマイナスドライバーもあった方がいいだろう。
分解の手順
それでは以下、分解の手順を紹介していく。
【手順1】 まずは、バッテリー、バッテリーカバー、ケーブル類、W-SIM、microSDカード、拡張コネクタのカバー、スタイラスを外す。筆者のD4の場合、拡張コネクタはとっくの昔になくしたままだった。忘れがちだが、W-SIM、microSDカードも必ず外しておこう。
【手順2】 筐体を裏返し、裏側のねじを外す。外すねじは8本。1本はT5トルクスドライバーを使用する。特に真ん中のねじを忘れてしまいがちなので注意しよう。筆者も忘れて、後で筐体が離れずに焦った。
さらにストラップホールにあるねじも外す。
次に、キーボード右下のゴムをマイナスドライバーなどでこじあけ、その下のねじを外す。なお、左下のゴムは外す必要がない。筆者は勘違いして外そうとしたが、すでにねじはなく、接着剤が流し込まれていただけだった。おそらく、筆者のD4は初期モデルのため、バッテリーの改善時のハードウェア回収時に外されたままだったのかもしれない。
【手順3】 本体を二つに分ける。まず、力を入れすぎてはいけない。ゆっくり、つねにゆっくり、弱いくらいの力で、側面の黒とシルバーの境目部分にかるーく力を入れ、上下に離す感じで行う。W-SIMスロット側から行うとやりやすいようだ。W-SIMスロット部分でちょっと引き離し、microSDカードスロット部分で次に力を入れるといった感じだ。W-SIMの蓋やmicroSDカードの蓋はここで外れてしまうだろう。
この時、絶対に無理をしないこと。ケーブルやフレキシブルケーブルは意外に丈夫だが、過信してはいけない。試して無理だと思ったら、一旦やめて、お茶でも飲んでからもう一度トライするくらいのつもりで、時間をかけてやろう。無理をしなければ必ず、外すことができるはずだ。
【手順4】 D4を上下に分解。無事、D4が上下に分解できた。ケーブルに注意して丁寧に扱おう。
【手順5】 基板のねじを外す。次に、2カ所ある基板のプラスねじを外す。
【手順6】 HDDを外す。基板を外さなくてもHDDを取り外すことができる。なるべく簡単にするために、このままHDDを外そう。少し基板を持ち上げ、HDDを右下から引っ張り出す。ゆっくりやろう。注意点は、HDDのフレキシブルケーブルを逆方向に曲げないことだ。
【手順7】 HDDからフレキシブルケーブルを取り外す。黒いレバーを爪の先で持ち上げる(手前から向こうに倒す感じ)と、フレキシブルケーブルのロックが外れる。フレキシブルケーブルを壊さないように注意しよう。
フレキシブルケーブルを外したら、SSDに取り付ける。取り外した作業と逆の手順でやればいい。2mmほどと、わずかだけフレキシブルケーブルを刺した後で、ロックをかける。
HDDの導電性テープをはがして衝撃吸収用のシリコンを取り外す。ゆっくりやれば多少汚れてもいいだろう。マイナスドライバーなどを利用すると、はがれやすい。次に逆の順序で保護していく。厚みや大きさがかなりSSDの方が大きいので、無理矢理な感じになってしまうが、あまり気にしない方がいいだろう。特に厚みはかなり違うので、ある程度割り切りも必要だ。
元のHDDはケースに入れたり、好きに利用すればいいだろう。
【手順8】 SSDを本体に挿入する。SSDは元から入っていたHDDに比べてかなり高さがあるが、十分収納できる。ゆっくりと入れていこう。この時、中を覗いてシリコンがおかしな形に曲がっていないかどうかを確認しておこう。
次に、フレキシブルケーブルを基板に装着しなおす。かちっという感じで止まるまでゆっくり、あまり力を入れすぎずに押し込む。簡単に取れてしまうこともあるので、後で何度かきちんと装着されているかどうか確認しておこう。さらに、ここでUSBポートの蓋を装着しておこう(後でも簡単に装着可能だが)。
本体の上下を合わせて、イヤホンジャックのある側の隙間からフレキシブルケーブルのコネクタを基盤に指で取り付ける。接合する部分が限られているので、落ち着いてどこに装着しなければいけないのかをよく確認してから、ゆっくりていねいに装着しよう。かちっと留まるのがわかるはずだ。
本体を合わせて(本体の)爪をはめ込んで固定していく。ちょっと子供向けのプラモデルでも組み立てているような感じだ。これもゆっくりと作業を進めよう。続けて、W-SIMポートの蓋とmicroSDポートの蓋を取り付ける。蓋はスロットの四角に合わせてはめ込めば、根元は勝手に合うようになっている。
蓋を閉める前に隙間から覗きこみ、HDDのフレキシブルケーブルと、基盤の上下をつなぐフレキシブルケーブルのコネクタが外れていないか確認しておこう。これは結構よくやるミスで、その後動作しない場合のかなりの原因になっているようだ。
【手順10】 SSD動作確認。本体の上下をはめ込んだら、ねじを全部留めてしまう前にSSDが認識されるかどうか確認する。D4にバッテリーを取りつけ、電源ボタンを入れよう。「WILLCOM D4」のロゴが表れ、画面左下に「System Configuration Utility」という文字が出たら、セットアップ画面が表れるまでキーボードの「Fn」+「2」を押し続ける。BIOS画面が起動するので、SSDになっているかどうかを確認しよう。
もしSSDが認識されていないようだったら、もう一度D4を分解し、特にフレキシブルケーブルなどのコネクタが外れていないか確認する。十分確認したら、再度組み立てなおし、再度バッテリーを挿入して電源を入れる。実際、どこも外れていないように見えても、一度すべてのコネクタを外してもう一度組み立てるだけで動作する場合がある。また、電源を再度入れるだけで起動する場合もある。
ここまで来れば、後は、リカバリディスクでVistaにするもよし、Windows 7 RC版をインストールするもよし、自由に設定していけばいい。
簡単なベンチマークテスト
HDD、USBメモリなどの転送速度を測るベンチマークソフト、Crystal DiskMark(作者:ひよひよ氏、フリーソフト)でベンチマークしてみた。ベンチマーク上では結構高速になっているが(Vistaの方がWindows 7 RCよりも高速なのは意外といえば意外だが)、体感上それほど差は感じなかった。筆者の主観的な感想にすぎないが、確かに速くなっている気はするが、ベンチマークほどの差は感じない。
やる価値はあるのか?
手放しにはお勧めできないというのが正直なところだ。分解→交換作業には、物理的に壊してしまうリスクを伴うし、一般的にSSDは決して安い部品ではない。
とはいえ、ベンチマークで見てわかるように、数字上のディスクアクセス速度はかなり高速になっている。今回のSSDは速度よりはサイズの小ささを優先したもので、決して高速なタイプではないが、それでも高速化される部分があることも確かだ(体感できるかどうかには個人差があるが)。
ディスク容量の観点から見ても、標準搭載の40GBを上回っているので、容量不足を感じた際に、大容量化を兼ねて60GBのSSDを利用するのも一つの手だろう。
筆者の場合、換装作業そのもので戸惑うことはなかった。それでもフレキシブルケーブルを破損してしまったり、静電気などで機器自体を壊してしまう事態は起こりうるので注意が必要だ。
とはいうものの、筆者は本稿を執筆して、個人的にもSSD化してみたいと考え始めている。分解作業を通じてHDDとSSDの入れ替えが手軽に感じたことが一つの理由だが、やはり物理的な衝撃への対応という点で、HDDよりもSSDの方が安心できる点は大きい。
最近、他のUMPCなどに浮気しがちだった筆者だが、久しぶりにD4に触れると、ポインティングデバイスの操作性のよさ、ハードウェア面でのパフォーマンスといった特長を再認識したためだ。これもSSD化した恩恵の一つかもしれない。