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Analyticsで直接トラフィックのアクセス解析 (6/6)

2009年07月18日 00時01分更新

文●中野克平/デジタルコンテンツ部編成課

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ゴールデンウィークにノーリファラートラフィックが減る本当の理由は?

 どうしてノーリファラーが多いときはサイト/カテゴリートップのPVも多くなるのでしょうか。「サイト/カテゴリートップ」列を読んでいくと、サイト/カテゴリートップと記事公開本数の相関係数が0.69(弱い相関)あり、「サイト/カテゴリートップのPVが多いときは記事公開本数も多い」ことが分かります。以上をまとめると、次のようなノーリファラートラフィック増減の仮説が立てられます。

  • 常連ユーザーはWebサイトの更新をブックマーク経由で訪れて確認している
  • 記事の更新頻度が高いと常連ユーザーが何度も確認に訪れる
  • 常連ユーザーが何度も確認に訪れるとサイト/カテゴリートップのPVが増える
  • サイト/カテゴリートップのPVが増えると、ノーリファラートラフィックが多くなる
  • ノーリファラートラフィックが多い日は新規ユーザー率が低くなる

 こうして指標の相関係数を求めると、「勤務先からアクセスしている既存ユーザーがゴールデンウィーク中にアクセスせず、通常時と比較してノーリファラートラフィックが減った」という仮説が、証明されていないことが分かります。

「ええ!?」――ゴールデンウィーク中は記事の更新も滞りますので、ゴールデンウィークで常連ユーザーが勤務中からアクセスせず、記事を更新しても常連ユーザーが来ない状況だったのか、記事の更新がないので常連ユーザーが来なくなり、ノーリファラートラフィックが減ったのか、分からないからです。

「では、結局何も分からないということでしょうか。なんだかアクセス解析って徒労のような気がします」――そんなことはありませんよ。「ゴールデンウィーク中で記事を更新しなかったからノーリファラートラフィックが減った」仮説は、土日に記事を投入して反応を調べたり、ゴールデンウィークとひとくくりにせず、カレンダー上は平日で、記事の投入があった日はどうだったのか調べたりすれば検証できます。サンプル調査しかできない従来のマーケティングと異なり、Webマーケティングでは対象すべてを調査し、指標が取れる範囲では「こうだった」と断言できるのが特徴です。

「なるほど。では、今回のようにトラフィックの増減の原因を調べるのは何の意味があるんでしょうか? 確かWebサイトの目的を決めないと、アクセスを解析しても無意味という話だったと思いますよ」――むむむ。「休日だったから説」が証明されず、本質的なところで攻めてきましたね。

 ノーリファラートラフィック減少の理由を詳細に検討することに何の意味があるのかは、Webサイトの収益モデル(目的)によって異なります。たとえば、広告モデルのメディアサイトで、インプレッションで収入が発生するとしたら、記事の投入を多くして、常連ユーザーが更新の確認に訪れる頻度を高めれば、収入も増えるはずです。また、物販モデルのECサイトで、新商品が出るたびに常連ユーザーが買ってくれるとしたら、新商品の投入頻度を高めれば、収入も増えるはずです。

 重要なことは、担当するWebサイトのトラフィックがどのようなメカニズムで生まれるのかしっかり頭に入れておくことです。どんな原因でどんなトラフィックが増えるのか把握し、かけるコストと収入のバランスさえ間違えなければ、Webサイトの運営は必ずうまくいきます。


 次回は、ノーリファラートラフィックのユーザーがサイト内でどのように行動したのかを分析します。


著者:中野克平(なかの かっぺい)

アスキー・メディアワークス技術部基盤研究課係長(兼デジタルコンテンツ部編成課係長)。ASCII.jpをはじめとするアスキー・メディアワークスのWebサイトについてアクセス状況を解析し、事業を改善する報告をしながら、基盤となる検索エンジン技術、Webアプリケーションの研究開発を担当している。

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