ノーリファラーユーザーは分析しにくい
「URLを直接入力したり、ブックマークから訪れたりするということは、ノーリファラートラフィックのユーザーはWebサイトの存在を知っているということですか?」――たいていの場合はその通りです。会議や電話、テレビやラジオで読み上げたり、雑誌や新聞に掲載されたりしたURLをWebブラウザーに入力する場合もリファラーがつきませんので、厳密にはノーリファラーだからといってサイトの存在を知っているとは限りません。しかし、ノーリファラートラフィックはURLを直接入力したり、ブックマークから訪れたりするWebサイトの常連ユーザーが多いと思ってよいでしょう。また、誰かに言われてURLを入力するわけですから、相手を信頼して訪れているとも考えられます。
常連ユーザーはWebサイトに対する忠誠心がもっとも高く、セッション中に読むページ数も多めの傾向があります。URLを記憶したり、ブックマークしてくれたりしていますので、物販サイトであれば、購入金額も多めになるでしょう。しかし、リファラーという「証拠」がなく、ノーリファラートラフィックが増減しても、何かの雑誌記事や新聞で取り上げられて増えたのか、常連ユーザーに飽きられて減ったのか、はっきり分析しにくいのも特徴です。ノーリファラーのユーザーが増減する原因が何か、ASCII.jpの事例を検討していきましょう。
アクセス解析の基本は「同じ長さの期間の比較」
Google Analyticsの最初の罠は、デフォルトの集計期間が31日間の単独レポートになっていることです。これでは、「ページビューが○○万PVだ」「直帰率が○○%だ」という個々の指標にしか目が向きません。毎日、すべての指標には目を配れませんので、Google AnalyticsでWebサイトの指標を見るときは、最近の31日間とその前の31日間、最近の31日間と前年の同じ時期など、一定の期間を比較し、傾向の変化に気づけるようにしましょう。単に指標の変化だけ追いかけていると、たとえば季節変動に振り回され、適切な対策ができなくなってしまいます。
たとえば、ワインショップの売り上げはクリスマスシーズンに集中しますので、12月と1月のアクセスを比較してもほとんど意味がありません。前年、前々年の同時期と比較し、何が変化し、何が売り上げに影響しているのか検討しなくてはいけません。Google Analyticsのデータ保存期間が25ヶ月なのは、「2年前までの同時期までは比較できる」ということです。よく考えられた仕様ですね。
さて、以下の表は、ASCII.jpのあるサブドメインの同じ日数のトラフィック別指標を比較したものです。ASCII.jpはメディアサイトですので、ワインショップの話はいったん忘れて、以下の表を見てください。
期間N | 期間G | 増減 | ||
全体 | セッション数 | 1,108,757 | 1,026,688 | -7.40% |
平均ページビュー | 3.93 | 4.02 | 2.42% | |
ページビュー | 4,354,178 | 4,129,493 | -5.16% | |
直帰率 | 46.23% | 45.78% | -0.98% | |
ノーリファラー | セッション数 | 263,748 | 223166 | -15.39% |
構成比 | 23.79% | 21.74% | -8.62% | |
平均ページビュー | 4.21 | 4.57 | 8.34% | |
直帰率 | 43.30% | 43.61% | 0.72% | |
参照サイト | セッション数 | 330,835 | 339,165 | 2.52% |
構成比 | 29.84% | 33.04% | 10.71% | |
平均ページビュー | 3.89 | 3.85 | -0.98% | |
直帰率 | 44.64% | 42.27% | -5.30% | |
検索エンジン | セッション数 | 514,173 | 464,334 | -9.69% |
構成比 | 46.37% | 45.23% | -2.47% | |
平均ページビュー | 3.8 | 3.89 | 2.15% | |
直帰率 | 48.76% | 49.68% | 1.27% |
「数字が多すぎて、無理です! 何がなんだか分かりません……」――まぁまぁ、そう焦らずに。注目すべきは赤、緑になっている増減の箇所だけです。前回、Google Analyticsでのアクセス解析の基本として紹介した「Webトラフィックの基本モデル」を頭に入れて、ノーリファラー、参照サイト、検索エンジンという3つの経路が、どのように変化したのか気づくことが重要です。
まず把握しなければならないのは、期間Nと期間Gで、全体のセッション数が7.4%減少していることです。その上で、何が原因なのか見ていくと、ノーリファラートラフィックが15.39%、検索エンジンは9.69%減少していることが分かります。実数で見ると、ノーリファラートラフィックは4万582セッション、検索エンジンは4万9839セッション減っており、全体のセッション数が8万2089セッション減っていることの説明がつきます。
今回はノーリファラーの分析がテーマですので、できればノーリファラーセッションだけが減っている事例にしたかったのですが、ASCII.jpのどのサブドメインでも、適例を見つけられませんでした。実務であれば検索エンジントラフィック減少の原因も探るべきですが、以下ではノーリファラーセッションが減った原因を調べていきます。