「これは弁天様に見えない」と言われたこともあった
――あれだけ思いきり萌え系に踏み切っていると、檀家さんの反応が気になります。
三井 お寺に来られる方々にもご好評いただいていますよ。それは単純に「アキバ」とか「萌え」とかではなく「かわいい絵だね」って思っていただけているようです。
とろ美 「萌え系」ですか? 自分はそこまで考えていなくて、かわいくデザインできたらなって描いてみただけなのですが。ご本尊を「キャラクター化して欲しい」というあたらしい試みに精一杯応えたくって頑張ってみました。
――ここ1週間でネットで話題になりました。実際にお寺を訪れて写真を撮る「聖地巡礼」と呼ばれる行為も増えてきたようです。
とろ美 ネットで見ました。本当に光栄です。私のサイトもあるんですが、アクセス多すぎでダウンしたりして、びっくりしました。話題にしていただけて、楽しんでいただけているのはとてもうれしいです。「聖地巡礼」ですか? すごくご利益ありそうですね。
――どれくらいの期間をかけて作られたんですか?
とろ美 はじめに話が出たのが3月頃で、4月くらいに描きはじめ、5月に出来上がったというスケジュールでした。考えてみると早いですね。
実際にできあがった看板を設置するところはスティッカムTV(ライブカメラを使ったコミュニティサイト)の「クレイジーオタクワールドオブゲンカンマット」という番組で放送しました。それと同じ内容がニコニコ動画にもアップされています。「とろ美」か「了法寺」で検索すれば出てきます。
――神様をイラスト化するのは難しかったのではないかと思います。
とろ美 はじめお話をいただいた時は自分自身、お寺に対するイメージで「不謹慎では?」と思ってしまいましたが、ご住職に詳しくお話を伺った所、仏教や宗教はもっと大らかなものなんだなって思いました。むしろ人に対してずっと好意的で身近なものなんじゃないかな?
だからこうして新しいデザインにするのも、それをみんなが「萌え」って言ってくれるのも決して失礼ではないし、忘れられていったりする方が寂しいと感じます。もっと知って欲しいし、理解して欲しい。だってもともと人の幸せのためにあるものだったはずでしょ? 神様は人の事大好きみたいですよ。
御神体を見せていただいて、その後に住職に取材というか、神様に関するお話を詳しくお伺いして。とにかく間違いや失礼があってはいけないというので、細かいところまで正確になるよう気をつけました。
――具体的にはどういったところで。
とろ美 たとえばラフの時点で、上人が頭に巻物を載せているのは文献どおりだったんですが、本当はその巻物の本数が「8本」から3本少なかったのを直したり。あと、弁天様が琵琶の代わりに剣を持っていたり、竜神様が鍵を持っていたりという。
三井 住職が心配になって「(ラフを見て)これは弁天様に見えない」と言っていたこともありました。足はもうちょっと細いといいね、なんて言って直したとき、「それだと弱くなるから戻して」というやりとりをしたこともありました。
――そのほかに気をつけられたことは。
とろ美 せっかくデザインさせてもらうので「現代的に」というのは考えました。衣装は実際に着られる形をイメージしてみました。
――神様をあらわすキャラクターに「とろ弁天」という名前がついているのは。
三井 名前はわたしが考えてます。ただ、鬼子母神は力の強い神様なので、その名前がついてしまうと逆にダメと言われたんですよね。弁天様に関しても同じです。だからむしろ「とろ弁天」で構わないと。