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行っとけ! Ubuntu道場! 第2回

~師範! Ubuntuって何ですか?【後編】~

2009年07月16日 16時30分更新

文● hito(Ubuntu Japanese Team) イラスト●瀬尾浩史

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コミュニティで「事件」は起こらないの?

ミズノ:コミュニティ中心っていうと、もめ事とか、途中で空中分解とかそういう厄介ごとが表に出てくる気もしますが……。

あわしろいくや:ないですなあ。最近ちょっと、「Monoの特許周りとかどうなってるの? マイクロソフトに訴えられたら負けるよね」みたいなやりとりはありましたが。

hito:コア開発者はほとんど誰も反応しなくて、いきなりテクニカルボード(注1)からコメントが降ってきて沈静化、というスゴい光景が展開されました……。

やまね:なんてコメントしたの?

hito:要約すると、「特許問題はすべて我らCanonicalが責任を負う。ゆえにUbuntuでは問題とはならない」。

やまね:か、金持ちつえぇ……。Debianでは考えられん。

ミズノ:困ったときのCanonical頼み?

小林:そういった特許論争以外では、揉め事は見かけないように思います。

あわしろいくや:まぁ実力主義というのがうまく回っている気がしますね。

hito:役に立つことをやる人がえらい人。えらい人の発言はたぶん、ふつーの人の発言よりもマトモ。だからえらい人に発言権と決定権を積極的に与えておく、と。

ミズノ:仕事をして、実績を積めば意見を聞いてもらえる?

hito:少なくとも技術的な問題ではそうですね。わりと強烈な実力主義です。フレーム(論争)起こすにも実績が必要、って感じ?

Ubuntuのガバナンス(統治)についての解説ページ(http://www.ubuntu.com/community/processes/governance)。SABDFLの項に「デモクラシーではなく、メリトクラシー(実績主義)である」とハッキリうたわれている

編集S:Debianから分離した経緯を説明して欲しいなー。

小林:Debian開発者の一人だったお金持ちのマークさんが、ある日、「このお金を使って何かできないかな?」と考えて、「誰でも使えるオペレーティングシステムが必要だ!」「Debianだけでは出来ないことをやってみよう!」という結論に至りました。そして、UbuntuというものをDebianとは別の可能性として立ち上げた、と理解して頂くのがいいと思います。

ミズノ:勘違いしてる人多いけど、別にDebianとは仲悪くないよ!(今は)

hito:DebianとUbuntuの仲が悪いという主張をする人は、たぶん古い情報で生きていこうとする人なんじゃないかなぁ……。

やまね:確かに昔は険悪ムードはあったね、GNOME関連パッケージのアップデートを巡って。Ubuntuのパッケージだけ優先的にアップデートするのやめれー、って。

あわしろいくや:しかもGNOME関係者を、ことごとくCanonicalが引き抜いた後の出来事ですからねぇ。

やまね:Debian完全放置でUbuntuのパッケージだけアップデートしてるけどいいのか?ってNovell(SUSE)の人にツッコまれたりとか。あれは結構ヒドかった気がする……。

hito:今はあそこまでヒドイことはなくなってますね。上の方は仲悪くない、というか、少なくともスタンスとして対立はしてない、が現状かな。微妙な緊張感らしきものはありますが。あれ、険悪になったのは、Ubuntuが分岐した直後だから……ええと、実はもう4年ぐらい経ってる?

やまね:そう。ほんとうに古い話だよー、って感じ。

あわしろいくや:昔話じゃなくて未来に生きようぜ!

やまね:あわしろいくや先生の次回作にご期待ください!

ミズノ:え、あわしろいくや先生連載打ち切りなの?

あわしろいくや:なにを打ち切るのっ!?

瀬尾浩史:打ち切りコワイ打ち切りコワイ(がくがくぶるぶる)。

やまね:頭を抱えて、涙目で首をぷるぷるさせてるペンギンの絵が浮かぶ……。

hito:まぁ気づくとLaMont(注2)とか重要な開発者がことごとくCanonical社員になってた事件とかはあるものの。

やまね:HPだったのにねぇ……。

ミズノ:あとは衝撃的な人はそんなに残ってない?

hito:いや、Ian(注3)のCanonical入社とかが実現すればまだネタが……。

やまね:Sunからかっ!

小林:あまりにもUbuntuにリソースが集中しすぎるのは良くないですね。といっても、Debianにはいまだに大きなリソースはあるわけですが。

ミズノ:Debian主体じゃなくて、コミュニティ全体としてみれば、多様化するのは悪いことじゃないよね。

やまね:とはいえ、スーパーマーケット的に扱われたくない、という開発者の声もあるんですよ。これとか。

hito:これ、「Ubuntuが奪ってる」が主題じゃなくて、「Ubuntuが目立って、努力してるDebian踏み台。これモチベーション的によくない。Debianもっと目立っていこう!」だよね。

瀬尾浩史:じゃぁ「でびあにゅ!」とかいうマンガを……。ああああ嘘です嘘です、ギャラクティカマグナムは止めてください編集Sさんっ。

(注1)
ミズノ:テクニカルボード? 技術板?
編集S:え、板ってことは、2ちゃんにあるの?
hito:違います。Technical Board。技術理事会、かな。Ubuntuの技術系の意志決定機関です。
小林:他に、Community Board(コミュニティ理事会)やApproval Board(加入理事会)、MOTU Council(MOTU評議会)といった、「選挙で選ばれた人達による、複数の意志決定機関」が存在します。

(注2)
小林:LaMontこと、ラモント・ジョーンズさんはbindやpostfixパッケージのメンテナをされている方です。
ミズノ:今でもDebianの開発者も兼ねてる?
やまね:兼ねてるよー。bindとかpostfixのアップデートでは現役ばりばり。

(注3)
やまね:Ian(イアン・マードック)はDebian始めた人です。Debianの「ian」の部分は彼の名前。
ミズノ:「Deb」の部分はガールフレンドの名前だっけ?
hito:今はSunでOpenSolarisプロジェクトに関わっているらしいです。「Chief of Operating Systems Strategy, Solaris Marketing」?
やまね:あ、SunじゃなくすでにOracleっていうべきかな……?

(次ページへ続く)

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