アナログのものはなくならない。これからも1人の歌手でいられたら
収録をするうち、徐々にボーカルとしてのモチベーションも上がり、やりたいことも増えてきた。自分の娘や息子くらいの年齢のファンがついたことに驚きを感じる一方、直接ライブで彼や彼女たちに声を届けたいという気持ちも生まれた。
だが、いざCDが発売され、オリコンチャートで上位にランクインしたときは実感が沸かなかった。自分はあくまでCDに「歌を提供している」と感じた。メンバー全員で作りあげたという思いが強かった。タイトルの後に自分の名前が入っていることにさえ気後れを感じたという。
「曲を提供していただいた方、イラストレーターの方、スタッフの方がいて初めて出来たものなんです。私はチームの一員として参加しているだけで、みんなで作ってきたものなんですよね」
最近は自身のブログも立ち上げた。ファンからの声が直接もらえるのが楽しいという。中でも印象に残っているコメントは「それまでボーカロイドの楽曲しか聴いたことがなかったが、CDをきっかけに、普通の曲も聴くようになった」というものだ。
元々はスタジオボーカルとして歌声を「素材」として提供していたのが、今度はそれとは逆に「生の声」が求められ、ソロシンガーとしてデビューした。その経緯を振り返り、「これも不思議な縁だと感じています」と風雅さんは口にする。
「どれだけデジタル化が進んでいっても、生(なま)のもの、アナログ的なものは絶対になくならないと思うんですよ。だからこそ、これからも1人の歌手でいられたらとあらためて思うんです」