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「出版」はどこに行くのか? サイゾー創刊者・小林弘人氏に聞く

2009年07月10日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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Twitter時代にメディアはどう読者と向き合うのか

―― たとえばミニブログ「Twitter」上でカンファレンスなどを中継しているとき、そこにはリアルタイムに投稿される記事を中心としたユーザー同士のコミュニティーが生まれています。はじめの話にあった「読者のコミュニティーを生むのが雑誌」という考えからすれば、これも1つのメディアの形ということになりますね。

小林 Twitterの以前から「プロセス・ジャーナリズム」1という言葉の萌芽はありました。また、「バックチャンネル」といってIRCを利用して進行中のイベントの感想に対する意見を交わしたり、揶揄するなどということがありますね。

 これは講演に参加しているとき、「今誰それがいいことを言った」といった感じでチャットを通じて講演内容にコメントしていくものです。ニコニコ生放送みたいなものですね。

 多少ラジカルなスピーカーの場合、そのバックチャンネルを背後のスクリーンに映しながらスピーチを行なうという例もありました。しかし、まだ閉ざされていたことと匿名がほとんどだったため、野次の領域を出ないことのほうが多かったかと思われます。しかし、Twitterではそれがオープンになり、陰口から報道に転じた点が大きいと思います。

※1 プロセス・ジャーナリズム: ニュースを取材の途中から配信していくジャーナリズム手法のこと


―― そのときに気になるのは、そこで報道をする市民記者がどうやって生活を成り立たせていくかという点です。

ユーザーの寄付によりジャーナリストの取材費をまかなうコミュニティ報道サイト「Spot.Us」。記者は取材したい記事のアイデアを投稿し、その記事を読みたいと思ったユーザーは寄付をする

小林 それはTwitter以前から横たわる切実な問題ですよね。欧米では寄付を募りやすいという側面があり、アメリカでそういった市民記者たちを取材されてきた東京新聞の池尾伸一さんによれば、ウェブを通じた寄付により市民記者の生活や職務遂行が賄われているようです。

 たとえば「Back to Iraq」ではイラクを取材しようとしたジャーナリストが寄付を募り、実際に渡航しています。コミュニティサイト「Spot.Us」では、記者が取材したいテーマを決め、プロットをサイト上に掲載し、得られた寄付金を基に活動しています。

 名の知れた専門的なライターであれば、ファンである読者からマイクロペイメント2を使って直接取材費にあてるといったこともできるようになるんじゃないでしょうか。

※2 マイクロペイメント: 決済手数料がかかるため、クレジットカードでは決済が難しい1円から数百円単位の少額決済のこと。


―― 出版社などメディアが直接Twitterを通じてユーザーに関わる例に、1つのキャラクターとしてユーザーと直接コミュニケーションをとる「@asahi」のような手法が注目されています。

小林 DELLなどの法人もTwitter上でユーザーとコミュニケーションを始めています。bot(プログラム)ではなく、人力で投稿している企業の使用事例も散見されますね。メディアもアカウントを取得して利用を開始していますが、まだRSSフィードをそのままTwitterでつぶやいているケースが多いでしょう。

 ただ、メディアの場合はフォロー数が圧倒的に多くなるため、個人レベルでフォロワーとやり取りしたりするのは難しいでしょうし、Twitterのためだけに人的資源を割くことに限界もあるでしょう。ブリトニー・スピアーズやNBAのプロバスケット選手は自分の代わりにGohst Twitterer、つまり代筆者を雇っているようです。


Twitter上で連載をしている「Twitter小説」の一例。画像はカエルカー氏の書いたもの

―― テレビアニメ「けいおん!」では、登場人物がTwitter上で「つぶやく」という(ユーザーによる)ユニークな試みがありました3。これからは逆に、コミュニケーションからストーリーが生まれるという可能性も出てくるんでしょうか。

小林 Twitter上で小説を書く「Twitter小説」というのも出てきていますね。わが国には携帯小説があるくらいですから、それもさほど奇異には聞こえません。ただ、それを仕掛ける出版社はまだ出てきていません。昔から文学をやっているタイプのメディアがそこに入ってくるのはまだ先のことかも知れないですね。

※3 ただし、これは放映元であるTBSが作成したアカウントではなく、ユーザーが二次創作として作成したもの

お詫び:掲載当初、TBSアニメ「けいおん!」キャラクターによるTwitter上のアカウントがTBS公式のものと誤解を招くような表現になっていました。お詫びするとともに訂正いたします。(2009年7月10日)

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