受信契約者の1/2000しか見ていない
NHKオンデマンド
昨年12月にスタートして半年経った「NHKオンデマンド」が、色々と話題になっている。当初は「いよいよNHKがネット配信に進出」とか「民業圧迫だ」などと言われたが、先月の会長会見で明らかにされた実績は、無料で登録している会員数が約8万1000人、有料会員数が約1万8000人。田舎のケーブルテレビ局ならともかく、NHKの受信契約者は3700万人だ。その1/2000しか有料会員になっていないのは、どういうことなのか。
公共放送の本家であるBBCが2007年に開始した「iPlayer」は、全英最大の人気サイトになり、1日1000万ページビューを超え、イギリスの通信トラフィックの5%を占拠して通信会社やISPを悩ませているというのに、NHKオンデマンドは月間でのビデオ視聴数(見逃し番組)が18万2000ビューだ。なぜこんなひどいことになっているのか、私も会員登録して体験してみた。
まず引っかかるのは「Internet Explorer以外には対応していない」という表示。iPlayerはMacintoshやLinuxばかりか、iPhoneやWiiなどの端末にまで対応しているのに、と不満ながらも、普段は使っていないIEを起動してクレジットカード番号などを入力しても、画面が見えない。どうもWindows Media PlayerのDRMの関係で、特殊なパッチを当てないと見えないようだ……ということが判明するまでに3時間。普通のユーザーはここで挫折するだろう。
そこで210円払って「見逃し番組」コーナーの人気ベストワンの「BS熱中夜話 マイケル・ジャクソン」というのを見てみた。1.5Mbpsモードを選んで全画面で見ると、やや粒子の荒さが見えるが、ちょっと離れて見れば問題ない。ただ番組の中身は、死後まもなく収録されたらしく、肝心の音楽がほとんど無く、どうでもいい感想がだらだら流れる座談会で10分ぐらいで消した。これはおそらくインターネット配信ということで、原則として1曲ごとに配信の許諾が必要になる関係で曲が流せなかったのではないか。

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