高さを追加し新たなサラウンド世界を実現
高さを演出するため、Dolby ProLogic IIzを利用する際には、左右のフロントスピーカーの上部(60cm~1m)に、フロントハイトスピーカーを設置する。5.1chのシステムにフロントハイトスピーカーを付け加えるのであれば7.1ch、同様に7.1chにフロントハイトスピーカーを加えれば9.1chになる。
ただ通常のマルチチャンネルのソースには、真横や真後ろの音というのはあっても、上や下といった高さの概念はない。そこでDolby ProLogic IIzでは、左右斜め後方の「逆相成分」を取り出し、片方のチャンネルの位相を反転して同相とした上で、フロントハイトスピーカーから出力している。こうした工夫により、オリジナルの音から「何も足さず、何も引かない」まま、新しい空間演出を実現している。
なぜ逆相成分を取り出すのかというと、上下方向の音は明確な定位感や方位感がなく、またホールトーンなど残響成分が含まれているのが理由だという。つまり、明確な高さ感のある音をフロントハイトスピーカーによって表現するというよりも、たとえばコンサートホールの残響音や、遠くにある音の高さ感、そして広がりを演出してくれるものだと言えるだろう。
サラウンド感という意味で考えると、フロント左右の高い位置だけでなく、リアの上にも設置するといいのでは? と考えてしまうが、実はデジタル映画の仕様を決めている「Digital Cinema Initiatives」の規格では、高い位置に設置するスピーカーとして定義されているのは、Lvh(前方左上方)とCvh(センター上方)、Rvh(前方右上方)、Ts(トップサラウンド)の4つしかなく、後方は定義されていない。
また、家庭での設置を考えた場合、Cvhはモノラル感が強く出過ぎてしまう、Tsは天井高がないとスイートスポットが狭くなってしまうといったことから、現状の構成がベストと判断されたようだ。