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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第27回

ソニーが作った「普通のネットブック」 VAIO Wをチェック

2009年07月08日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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性能は他のネットブックと変わらず
「丁寧な作りで高解像度」が魅力

 すでに述べたように、VAIO Wはいわゆる「Atom N採用のネットブック」であり、仕様的に特別な部分はない。だから性能も推して知るべし、ではある。Windows XP Home Edition搭載なので、動作に遅さを感じることはまったくないが、CPU負荷は常に高めである。だが放熱効率は悪くないようで、発熱は高いところでも35度程度と、「そこそこ暖かい」程度に抑えられていた。膝の上で使う場合も、バッテリーが多少出っ張っている形状のため、もっとも熱い部分には触れにくくなっている。

各部の温度 放射温度計による測定、外気温は25℃。フルパワー時のデータはH.264の動画再生時に計測
パームレスト 底面の最大発熱部 キーボード左側 キーボード右側
アイドル時 約30度 約34度 約31度 約30度
フルパワー時 約31度 約35度 約32度 約31度

 内蔵ストレージは160GBの2.5インチHDD。ちなみに保証はなくなるが、本体背面のふたを開けると、HDDに簡単にアクセスできる。交換は容易だろう。

 標準添付のバッテリーは3セル(2100mAh)タイプで、バッテリー駆動時間約3.5時間と長くない。BBenchによる計測では、もっともバッテリーが長持ちする「スーパースタミナ設定」でも、2時間半を切る程度であった。2.4倍の容量(5200mAh)を持つ「リチャージャブルバッテリーパック(L)」が別途用意されているが、今回はテストできなかった。容量に比例するとすれば6時間弱は動作すると考えられる。このあたりも、同様のスペックの他社製品と大きな差はなさそうである。

バッテリー駆動時間の計測結果

バッテリー駆動時間の計測結果。「BBench」にて計測

 性能面で見れば、VAIO Wに見るべきところはほとんどない。VAIO type Pがいろんな意味で「ほかと違うパソコン」であったことに比べると、あまりにも「普通」である。

 だが、この製品はそれでいいのだろう。冒頭で述べたように、VAIO Wは普及型。「VAIO type Nのネットブック版」と言っても差し支えない。3セルのバッテリーが標準装備というのも、「モバイルユーザーとは違う層に売れるパソコン」という狙いに基づくものなのだろう。地味ではあるが、使いやすさを重視した、丁寧な作りのネットブックだと感じる。後発なのだからあたり前、といってしまえばそれまでだが、いかにも日本メーカーの製品らしい、細かな配慮がみてとれる。

 ボディーに使われる素材などにも、高級なパーツを使ったところはほとんどない。VAIO type Pが「見るからに手のかかった製品」であったこととは、大きな差がある。しかし、この価格でこの実用性ならば、この仕上げでも十分以上の満足感が得られる。

type Pに比べ、VAIO Wはさほど高級感はない

光沢で手の込んだ仕上げであるtype Pに比べ、VAIO Wはさほど高級感はない。「モバイル性よりも価格と実用性」を重視した製品、ということなのだろう

 ただし、ディスプレーが1366×768ドットであることは、現時点では他社製品にない大きな価値を持っている。使いやすいデザインと高い解像度のディスプレーがセットになることで、VAIO Wは驚くほどバランスが良く、実用性の高いネットブックになっている。この点こそが、現時点で他のネットブックとVAIO Wを分ける大きなポイントと言える。完成度の高いボディーに高解像度ディスプレーであるからこそ、VAIO Wは魅力あるネットブックになっているのだ。

 ディスプレー解像度が「普通」になることで、ネットブックと一般のA4ノートの差は、さらに縮まってしまった。処理性能の問題はあるにしろ、多くの人にとって、「ネットブック“以外”を買う価値」を問いかける結果になりそうだ。

オススメする人
・実用性の高いネットブックが欲しい人
・デザインのいいネットブックが欲しい人
VPCW119XJ/W、/Pの主な仕様
CPU Atom N280(1.66GHz)
メモリー 1GB
グラフィックス Intel 945GSE Expressチップセット内蔵
ディスプレー 10.1型ワイド 1366×768ドット
HDD 160GB
光学ドライブ 搭載せず
テレビ機能 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n(Draft 2.0)、Bluetooth 2.1
カードスロット SD/SDHCメモリー/MMCスロット、メモリースティックDuo(PRO対応)スロット
インターフェース USB 2.0×2、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど
サイズ 幅267.8×奥行き179.6×高さ27.5~32.4mm
質量 約1.19kg
バッテリー駆動時間 約3.5時間
OS Windows XP Home Edition SP3
予想実売価格 6万円前後

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。


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