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コスト削減100本ノック 第7回

初期費用も運用費用も併せて軽減!

【7本目】KVMスイッチで保守や移動コストを削減

2009年07月08日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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デジタルKVMスイッチのメリット

 従来のアナログKVMスイッチはローカルにキーボード・モニタ・マウスを接続する必要があり、エクステンダ(延伸装置)を利用してもKVMスイッチとKVMコンソールとの距離は数百m程度にしか伸ばせなかった。このため、KVMコンソールはサーバルームと同じ建物あるいは同じ敷地内に設置する必要があった。ところが、最近のデジタルKVMスイッチを利用すれば、ネットワーク経由で遠隔地のPCからサーバを操作できる。

40台のサーバの接続が可能なATENのデジタルKVMスイッチ「KN4140v」

 これは、KVMスイッチがWebサーバ機能を内蔵し、遠隔地のPCはKVMスイッチからActiveXやJavaアプレットをダウンロードしてKVMスイッチを操作するという仕組みで実現している。もちろん、通信内容は暗号化されるなどセキュリティ面にも配慮されている。

KN4140vの背面には、KVMコンソール側を接続するEthernetインターフェイスと、サーバを接続するためのEthernetインターフェイス(40ポート)が並ぶ

 デジタルKVMスイッチを使わなくても、リモートデスクトップなどの遠隔操作ソフトウェアを使えば、遠隔地のサーバを操作することはできる。しかし、サーバのネットワーク機能が起動しなければ遠隔操作ソフトウェアは動作しないので、ブルーバック画面や起動時のBIOS表示画面を確認することはできない。デジタルKVMスイッチなら、サーバに深刻な障害が生じた場合でも、ブルーバック画面や起動時のBIOS表示画面の内容を読み取って、適切な操作や指示を行なうことができる。サーバがキーボード入力さえ受け付ける状態であれば、遠隔地からのシャットダウンやリブートも可能なので、ベンダーのSE(System Engineer)やCE(Customer Engineer)を呼ぶ回数が減り保守費用を削減できる。

 また、トラブル発生時のダウンタイムも短縮され、サービスレベルが向上する。さらに、デジタルKVMスイッチは遠隔操作ソフトウェアと違って、サーバのリソースを使用しないため余計な負荷がかからないし、サーバごとのライセンス料も不要といったメリットもある。

デジタルKVMスイッチによるコストの削減例

 デジタルKVMスイッチの導入例は、大別して2パターンある。1つは、データセンターなどに設置した多数のサーバを遠隔地から操作する使い方だ。もう1つが、多数の拠点に配備された1~2台のサーバを遠隔地から操作する使い方だ。これまではIT業界の企業を中心として前者の事例が多かったが、今後は一般的なユーザー企業を中心として後者の事例が増えていくものと思われる。

 海外を含む100以上の拠点にサーバを配備している企業で、デジタルKVMスイッチを導入することにより社内オペレータやベンダーSEの出張をほとんどなくすことに成功した事例もある

 この企業では、これまでサーバにシステム障害が起こると、まず保守担当のCEがハードウェアを復旧し、次にベンダーのSEがOSなどのシステムを復旧し、最後に社内オペレータが業務アプリケーションを復旧してデータをリストアするといった作業を現地で行なっていた。デジタルKVMスイッチの導入後は、現地に入室したCEがハードウェアの復旧とCD-ROM/テープなどのメディア交換を行ない、ベンダーSEや社内オペレータは本社からデジタルKVMスイッチを使ってサーバを操作するといった流れでシステム復旧が可能になった。SEの現地派遣がなくなり拘束時間が短縮されたぶんだけ保守費用が下がり、社内オペレータの出張費用や移動時間も大幅に節約できている。

 ディスプレイやキーボードなどの導入コストの削減、サーバルームの設置スペースの節約、さらに保守費用の軽減など、KVMスイッチには多くのメリットが存在する。サーバの増設を考えている企業は、まずはアナログKVMスイッチの導入を検討してはいかがだろうか。そして、すでにアナログKVMスイッチを使っている企業は、次はデジタルKVMスイッチだ。規模が大きくなればなるほど、そのメリットは大きくなるだろう。

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