2009年6月12日に行なわれたイランの大統領選挙で、現職大統領であるアフマディネジャド氏が再選と伝えられたものの開票不正疑惑がもちあがり、ムサビ派を中心とした抗議行動が続いています。
イランは言論統制が非常に厳しい国で、テレビは国営放送のみ。電話も不通になることがあり、新聞や雑誌は検閲をされています。現職アフマディネジャド氏にとって有利な報道しかされません。
日本在住のイラン人留学生の方いわく、イランの家族に電話をかけると「ムサビ」や「選挙」といった言葉を発した途端に電話が切断されてしまうと言い、盗聴されている可能性が高いとのこと。また、海外のテレビを見るためにチューナーをつけることは違法で、見つかると撤去されてしまうそうです。
そこでムサビ氏はFacebookやTwitterなど、インターネットツールを使って情報発信をはじめました。ムサビ氏の支持者は都会の若者や学生に多いため親和性も高く、支持者たちもどんどんTwitter等を使った情報発信を行ない、それが海外のTwitterユーザーたちの目にとまり世界中に情報が伝播されるようになりました。
Tweetによる市民の声と、Retweetによる声の伝播
今回のイランにおけるTwitterの本当の威力はトップダウンによるものではなく、あくまで生々しい市民の声が伝播されることで生まれたと言えると思います。現場で活動している人たちが見たこと・感じたこと・聞いた生々しい情報が数多くの人の関心を引き寄せ、Retweet(tweetと呼ばれる他人の投稿を伝播させること)を産み、また質問に現地にいる人が直接答えることで理解を深めることができたのだと思います。
例えばこちらは多くの人によってretweetされていた、テヘランのある大学生のTwitterアカウントによるtweetを翻訳したものです。
「携帯電話は使用不可能。緊急時のみという表示しか出ない」
「今ネットの速度は2kbps。殆ど使えない」
「こんな状況なのに試験勉強をしている人もいるよ!」
「今日の試験は中止になった。寮を離れるように言われた」
「今テレビでデモで集まった人たちはアフマディネジャド大統領を支持している人々だと報道してた。信じられない!」
「校内で平和的に集まっていただけなのに放水銃で攻撃された」
「大学に対するこの扱いが続くなら教職を離れると教授たちが言っている」
「ひどい目にあった。顔が焼けるよう。たくさんの学生が捕まった」
「ムサビ派は事務所に12時半に集まれという噂。罠かはわからないけど行ってみる」
このような生々しいtweetに対して、海外で見ている多くの人がretweetをしたり、応援をしたり、質問をしたりしてTwitter界の中でイラン、特にムサビ派への支援の声が巻き起こりました。
「イラン」という単語を含むTwitter記事が書き込まれたピーク時は1時間で22万1744件もの書き込みが行なわれました(右図参照)。そのほとんどが海外での声のようですが、世界に与えるインパクトの大きさを物語っています。