
符号化技術を変更した100BASE
100Mbpsを実現するEthernetには、UTPケーブル内の4つの「より対線」を使う100BASE-T4と、光ファイバを使うLANの規格であるFDDI(Fiber-Distributed DataInterface)の物理層の仕様を取り入れた規格の集合である100BASE-Xファミリーが規定されている。現在広く使われる100BASE-TXは100BASE-Xの1種で、10BASE-Tと同じように2つのより対線を送信と受信に使う規格だ。
それでは、100BASE-Xの物理層の働きについて、データ送信を例に説明しよう。まず、図3が100BASE-Xの物理層である。先ほど図1で紹介した10BASE5/2/-Tの物理層と比べると、100BASE-Xには多くの副層が定義されているのが特徴の1つだ。また100BASE-Xでは、マンチェスタ符号化に代わって新しい技術が使われている。それが「4B/5B」と「MLT-3(Multi Level Transmission-3)」である(図4)。
まず4B/5Bは、オリジナルの4ビットを5ビットのパターンに変換する(図4の①)。たとえば「0000」は「11110」に、「1111」は「11101」に変換される。これによって、1または0の連続が4ビット以内に収まるようになっている。優れているのは、マンチェスタ符号化では1ビットを2ビット(2倍)にしていたが、この4B/5Bでは1.25倍と効率がよくなっている点だ。つまり、オリジナルデータで100Mbpsを実現するために、マンチェスタ符号化を使ったとすると200Mbpsが必要だが、4B/5Bでは125Mbpsでよいことになる。
続いて、シンボルビットの値が「1」のときに極性(+、-)を変化させるNRZI(Non-Return to zero inversion)という方式の信号に変換する。NRZIは光ファイバを使った伝送に用いられる伝送形式である。一度図3に戻って①を見てほしいのだが、100BASE-TXはUTPケーブルを使うので、NRZIに変換された信号をいったんNRZという単純な信号に変更する。
続くMLT-3で、シンボルビットが「0」のときは電圧レベルを変化させず、「1」のときのみ電圧レベルを順番に変えていく(図4の②)。これによって、1が連続したとしても「0→+1→0→-1→0」という変化を繰り返すことになる。
100BASE-Tの125Mbpsの伝送に必要な周波数は31.25MHzとなる(図4の③)。10BASE-Tに使うカテゴリ3のケーブルの最大周波数は16MHz。カテゴリ4でも20MHzなので、31.25MHzの信号は通せない。そこで、100BASE-TXでは最大100MHzをサポートしているカテゴリ5のUTPケーブルを利用することになる。
(次ページ、「大きな改良をした1000BASE-T」に続く)

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