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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第26回

低価格長時間のTimelineはモバイルの価格破壊か?

2009年06月24日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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バッテリー持続時間は「優秀」の一言
性能も発熱も価格以上の価値あり

 最後に性能はどうだろう? Timelineのウリのひとつは、長時間バッテリーの搭載によるバッテリー駆動時間の長さだ。今回も「BBench」を使ってチェックを試みた。

 結論から言えば、バッテリー性能はカタログどおりである。Timelineには、Acerが「PowerSmart」と呼ぶ省電力機能が搭載されている。この機能は簡単に言えば、バックライト輝度やCPUのクロックといった各種設定を、自動的に適切なものへと変更する機能だ。キーの上面にオン・オフするためのタッチセンサー式ボタンがあるほか、デフォルト設定ではACアダプターを外すだけでも動作する。

バッテリー駆動時間の計測結果

バッテリー駆動時間の計測結果。「BBench」にて計測。設定1:輝度最大・フルパワー動作。設定2:省電力機能「PowerSmart」機能利用

 今回はこの機能を使って、省電力機能を使って動作させた場合と、一切の省電力機能を使わなかった場合とで比較している。無線LANを使って通信をしながらで、6時間を大きく超える動作が確認できれば、このクラスの製品としてはきわめて優秀といって差し支えない。

 PowerSmartのいいところは、本当になにもしなくても、満足いくレベルの省電力性能を発揮しているところだ。手動で設定を変えることもできるのだが、バックライトの輝度をのぞくと、使い勝手やバッテリー駆動時間に大きな差が生まれる部分はない。ちょっとしたことだが、使いやすさの点ではプラスだ。

 なお、省電力機能を使わずとも5時間半近く動作しているのは、やはり大容量バッテリーを搭載しているが故のことだろう。パワーが必要な時はタッチひとつで省電力機能をオフにすればよく、このあたりの使い勝手もいい。

 発熱もさほど大きくはない。アイドル状態とフルパワー状態での温度差も、手に触れる部分では2度くらい、といったところだ。CPUなどが集中していると思われる本体の左側と、反対の右側とでは発熱が大きく異なるが、これも気になるほどではない。AtomやCore 2 Solo採用のノートパソコンでは、性能不足からかCPUパワーを常に使い続けるため、性能の割に発熱が大きい。しかしこの製品の場合、採用CPUはCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)である。そのためか冷却性能には比較的余裕があり、一般的な作業でも負荷が上がりにくい。発熱に関しては、快適さでは数値以上の差を感じる。

各部の温度 放射温度計による測定、外気温は25℃。高負荷時のデータはH.264の動画再生時に計測
パームレスト 底面の最大発熱部 キーボード左側 キーボード右側
アイドル時 約31度 約37度 約33度 約31度
フルパワー時 約32度 約39度 約34度 約32度

 搭載OSはWindows Vistaで、特に速度面での不満は感じない。Windowsエクスペリエンスインデックスの値は「3.1」。ボトルネックは、チップセットであるGS45 Express内蔵のグラフィック機能にある。ゲームには向かないだろうが、ビジネス用途なら特に問題とはならないだろう。

Windowsエクスペリエンスインデックスの値は「3.1」

Windowsエクスペリエンスインデックスの値は「3.1」。プロセッサーやメモリー、HDDに関しては十分に優秀だが、グラフィックス機能が足を引っ張っている

 さて結論である。性能的には、Timelineは申し分のないパソコンだ。最軽量でも最薄でもないが、十分に快適な性能と十分に長いバッテリー駆動時間を備えている。これでこの価格というのは、“十分以上”に注目に値する。このような製品が登場するに至った背景には、インテルが超低電圧版のモバイルCPUに関し、「CULV」(Consumer Ultra Low Voltage)というカテゴリーを作って、積極的な価格展開を始めている、という事情がある。CULVというカテゴリーを開くノートパソコンとして、Timelineは大きな価値を持つ商品といえる。

 それだけに残念なのが、キーボードやタッチパッドの構成だ。ホームポジションを気にしない人や、キーの間のホコリを気にしない人にはどうということはないのだろうが、私はそういった部分を大切にしてほしいと思う。なぜなら、それらはさほどコストをかけずに改善が可能な点だからだ。

オススメする人
・長時間動作するノートパソコンを、安く買いたい人
・ネットブックの能力に不満を感じている人
 
Aspire Timeline AS3810T
CPU Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス Intel GM45 Expressチップセット内蔵
ディスプレー 13.3型ワイド 1366×768ドット
HDD 250GB
光学ドライブ 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.0
カードスロット SD/MMC/メモリースティック(PROにも対応)/xDピクチャーカード兼用スロット
インターフェース USB 2.0×3、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅322×奥行き228×高さ23.4~28.9mm
質量 約1.6kg
バッテリー駆動時間 約8時間
OS Windows Vista Home Premium SP1
予想実売価格 8万9800円(H22、Officeなし)、10万9800円(H22F、Officeあり)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。


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