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Xeon 5500搭載サーバ&ワークステーション大集合 第16回

Xeon W5580を2基搭載、最高峰WSの実力を試す

2009年06月23日 12時00分更新

文● 石井英男

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80 PLUS SILVER対応の1110W電源を搭載


 デュアルCPUやNVIDIA SLIに対応するため、電源ユニットも1110Wと大容量だ。形状も特殊で、HDDなどと同様、ケーブルなしでマザーボードのコネクターに直結できる。マザーボードとは3つのコネクターで接続する。こちらもネジ止めなどはされておらず、簡単にユニットごと引き出せる。

電源ユニットは1110Wと高容量。特殊な形状をしており、簡単に引き出せる。また、取り外してAC電源ケーブルを繋ぐことで、正常に動作しているかチェックできる(正常動作していれば緑色のLEDが点灯する)

 電源不良がないかを確認したい場合には、この電源ユニットを引き出し、電源ケーブルをつなげばいい。問題がなければ緑色のLEDが点灯する。動作チェックのしやすさも考慮した設計だ。

 ワークステーションは、高性能なぶん消費電力も高いが、変換効率の高さを示す80 PLUS SILVER認証を取得しており、無駄なエネルギーの消費を防ぎ、電気代を節約できることも特筆できる。



レンダリングなどのマルチスレッド対応アプリでは絶大な性能を発揮


 それでは、その性能はどうだろうか? Xeon W5580を2基とNVIDIA Quadro FX 4800を搭載したハイエンド構成であり、そのパフォーマンスには興味があるところだ。

 そこで、16スレッドの同時実行に対応したベンチマークテストを実行してみた。ベンチマークプログラムとして利用したのは、3Dレンダリングベンチマークソフトの「CINEBENCH R10」とエンコードソフトの「TMPEGEnc 4.0 Xpress」である。

【ベンチマーク結果1】CINEBENCH R10

 CINEBENCH R10は、32bit版と64bit版が用意されているため、その両方で計測した。また、Xeon 5500番台には、熱設計の余裕を利用して、コアの動作クロックを自動的に向上させるIntel Turbo Boostと呼ばれる機能が搭載されている。Intel Turbo Boostの有効/無効はBIOS設定で切り替えられるので、ベンチマークテストでも、Intel Turbo Boostの有効/無効を切り替えて行った。

 比較のために、クアッドコアCPUのPhenom II X4 955 Black Edition(メモリー2GB、OSはWindows Vista Home Premium SP1)でも同じベンチマークテストを行ってみた。

 もちろん、Phenom II X4 955 BEは、ワークステーション/サーバー向けのCPUではなく、直接比較するには無理があるが(Xeon W5580のほうがクラスも価格も遙かに上)、Phenom II X4 955 BEもAMDのPC向けCPUでは現時点最速の製品であり、一般的なPCとZ800ではどれくらい性能に差があるのかを知るための基準にはなるだろう。

 まず、CINEBENCH R10 32bit版の結果だが、Intel Turbo Boost無効時のスコアは23688、有効時のスコアは25027であり、Phenom II X4 955 BEの10447に比べて、実に2.26倍から2.39倍ものスコアになっている。

 Phenom II X4 955 BEはクアッドコアCPUであり、同時に4スレッドを実行可能だが、Xeon W5580を2基搭載したZ800は同時に16スレッドの実行が可能である。CINEBENCH R10では、スレッドの最大実行可能数に応じてスレッドを生成するため、Z800での実行時は一つの画面を16エリアに分割して、同時にレンダリングを開始する。Z800は、Phenom II X4 955 BEの半分以下の時間で処理が完了しており、目で見てもその差は歴然だ。

 CINEBENCH R10 64bit版では、32bit版に比べてスコアがさらに向上しており、Intel Turbo Boost有効時は、Phenom II X4 955 BEの2.86倍ものスコアになっている。64bitOSと64bitアプリによって、Xeonの高い性能がフルに引き出されたといえるだろう。

【ベンチマーク結果2】TMPGEnc 4.0 XPress

 TMPGEnc 4.0 XPressを使って、1440×1080ドットのWMV形式の動画(長さは85秒)をBlu-rayスペックのMPEG-2形式(1920×1080ドット、VBR、32Mbps)に変換するのにかかった時間を計測したところ、Z800のIntel Turbo Boost無効時は181秒、有効時は174秒で変換が完了した。それに対し、Phenom II X4 955 BEでは217秒かかった。

 動画エンコード処理では、HDDへのアクセスも頻繁に行われるため、CINEBENCH R10ほどの差はないが、それでもZ800の性能が高いことは分かる。

 15000rpmのSAS対応HDDの性能が利いたた面もあると予想して、CrystalDiskMark 2.2でHDDパフォーマンスも計測してみた。こちらはZ800でのみ計測したが、シーケンシャルリード、シーケンシャルライトともに毎秒100MBを超えているほか、512Kランダムリード、512Kランダムライトも毎秒50MBを超えた。HDDのパフォーマンスも最速クラスと言える。ただし、通常動作時のファンの騒音は特に気になるほどではなかったが、HDDアクセス時のカリカリ音はやや大きい。

CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード 106.3MB/s
シーケンシャルライト 101.0MB/s
512Kランダムリード 57.57MB/s
512Kランダムライト 51.76MB/s
4Kランダムリード 0.950MB/s
4Kランダムライト 2.819MB/


3D CADやHD動画の編集など高性能な処理に応える


 このようにZ800は、日本HPのパーソナル・ワークステーション最上位機という看板を裏切らない性能、機能性を秘めている。信頼性や安定性といった要件への配慮もされており、これら4つの要素が高レベルかつバランスよく盛り込まれている点が最大の魅力だろう。

 価格はパーツ構成によって大きく変わり、最小構成では21万円台とハイエンドPC並みだが、試用した構成では90万円程度。競合他社で同一の構成を選択した場合と比較した場合でも大きくは変わらない(あるいは割安感がある)とはいえ、かなり高価な製品であるのは確かだ。しかし、ベンチマーク結果からも分かるように、個人向けPCの最上位機種に比べ数倍のパフォーマンスを実現しており、精緻なモデルの3D CADやHD映像のノンリニア編集といった重い作業をこなすには強い味方になるだろう。

 ハードウェアの性能向上によって、こうした時間のかかる処理が大幅に短縮され、単位時間当たりにこなせる作業量が増え、ビジネスチャンスが広がったり、オペレーターを拘束する人件費などが下げられるのなら決して高価な投資ではない。高性能ワークステーションとしての完成度は非常に高く、明確な目的を持った投資には必ず応えてくれるだろう。

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