インターネットの技術を利用するNTTドコモ
NTTドコモのiモードでは、通信にTCP/IPやHTTPをベースにしたプロトコルを利用している。コンテンツは、おもにC-HTML(Compact HTML)の仕様をベースに作られた「iモード対応HTML」で記述される。
C-HTMLとはHTMLのサブセット(一部分)であり、携帯電話だけでなく、PDAなどのモバイル情報端末で閲覧可能なWebページを作成するための記述言語だ。そのため、HTMLの仕様から携帯電話の狭い液晶では表示しきれないタグなどを省いている。文法自体は基本的に同じであるため、PCからでも表示することが可能だ。したがって、HTMLで記述されたコンテンツはC-HTMLに移植しやすいというメリットがある。
iモード対応HTMLはC-HTMLとほとんど同じ機能を持っており、さらにいくつかのオリジナルの拡張タグなどが加えてある。たとえば、電話番号へのリンクを埋め込むといったものだ。また、ダイヤルボタンを押すことによるメニューの指定など、携帯電話ならではの機能も追加されている。
同様なのがソフトバンクで、HTTPを利用し、「ソフトバンク携帯電話向けHTML」でコンテンツを作成する。これもまた、HTML 4.01をベースにしたページ記述言語である。最近では、NTTドコモ、ソフトバンクともにXHTMLに対応しているため、より多くのコンテンツを閲覧できるようになった。
KDDIが採用するWAP
KDDIのEZwebでは、サービス開始当初から通信の仕組みとして、TCP/IPやHTTPではなく、携帯電話用の「WAP(Wireless Access Protocol)」という仕様を採用している。この仕様は、携帯電話などの無線端末に対する標準を開発している業界団体であるWAP Forum(現OMA、Open Mobile Alliance)により策定された。
初期のWAPでは、コンテンツを作成するために、HDML(Handheld Device Markup Language)とその後継となるWML(Wireless Markup Language)という記述言語を用いていた。これらはXMLのサブセットであり、HTMLより動作が軽くモバイル端末に特化していた。通信プロトコルにはWAPでのみ用いられるWDP(Wireless Datagram Protocol)などがある。
続いてauの端末でインターネットを利用する仕組みを図2に示した。WAPでは、携帯電話からインターネット上のWebサーバへの通信はすべてWAPプロキシを介して行なわれる。WAPプロキシにはHTMLをWMLに変換する仕組みがあるので、HTMLによるコンテンツの配信が可能だ。このWAPプロキシでは、サーバから送られてきたHTMLファイルやWMLファイルをバイナリ形式に変換する。バイナリ形式に変換することによって、データ量を圧縮し、通信量を減らしている。
ただし最新のWAP2.0では、既存のインターネット技術を多く取り入れる仕様となった。たとえば、ネットワークの通信プロトコルは、iモードと同様にTCP/IPやHTTPを採用している。
Webサイトを記述する言語についても、W3CとWAP Forum主導の下、「XHTML Basic」を標準化している。記述方法がHTMLに近いため、PC向けのコンテンツを作成した経験があれば、比較的容易に携帯向けコンテンツを制作することができる。またデザイン面ではCSSに対応したため、端末の種類ごとに表示形式を変えるといった柔軟性が加わった。
こうした標準化を受け、NTTドコモやauはXHTMLをベースにした記述言語を採用するに至った。したがって、コンテンツ提供者は複数の記述言語で作成したページを用意する必要がなくなりつつある。WAPとXHTMLはますます業界標準の仕様へ近付いているといえるだろう。
(次ページ、「User-Agentで振り分け」に続く)
この連載の記事
-
第7回
ネットワーク
Webにまつわる危険をきちんと知っていますか? -
第6回
ネットワーク
ブラウザとサーバは何をやりとりしているの? -
第5回
ネットワーク
高度なWebアプリケーションを実現するRIAの仕組み -
第4回
ネットワーク
HTMLからXMLへ!Webを彩るコンテンツを知ろう -
第3回
ネットワーク
今さら聞けないWebサーバの役割と機能 -
第2回
ネットワーク
サーバを指定するURLの仕組み -
第1回
ネットワーク
Webブラウザから拡がる楽しい世界 -
ネットワーク
WWW完全制覇 - この連載の一覧へ