もともと家屋の天井などに設置されてきた
高効率パネルが搭載されている
さて、ソーラーケータイの話に戻る。
デザインとしては電卓のように身近な存在となり、また電波ソーラー時計のようにデザイン的な吸収が進むのではないか、と思われる。ただソーラーパネルを比べると、そのスペックは全く違うモノだ。電卓で使われていた太陽電池はアモルファスシリコン方式であったが、au・ソフトバンクどちらの端末も、採用しているソーラーパネルはシリコン多結晶方式だ。その理由を澤近氏と中田氏は次のように説明する。
「シリコン多結晶方式のソーラーパネルは住宅の屋上に設置してあるものと同じタイプです。室内灯ではなく、10~11万ルクスという晴れた日の屋外の太陽光で充電できます。アモルファスシリコンでは、ケータイを充電するための電圧まで供給できません」(澤近氏)
「短時間で充電して、少しでも早く使える状態にすることを優先しています。そのために高効率のソーラーパネルを採用しました。室内の場合は身近に電源コンセントがあるのでソーラーパネルで充電する必要はありませんが、屋外ではコンセントがありません。そのようなシチュエーションのためにチューニングしました」(中田氏)
高スペックなソーラーパネルの採用は、ケータイがあるライフスタイルの中での目的性から設定された。ソフトバンク端末の場合は防水ソーラーで夏のアクティブな生活を支えるため、au端末はかねてよりブランディングしてきたスポーツ、特にアウトドアでの活動のため。いずれもエコをうたっていないのが興味深い。
ソーラー充電のスペックは、すでに発売されているau端末では30分の充電で2分の通話を実現する。パネル自体はau端末とソフトバンク端末で同じスペックのものを採用している。
充電中のピクト表示にも工夫が見られる。936SHではパネルのすぐ下のLEDランプを光らせ、充電中であることを知らせる。太陽の光の下でも視認できる色を検討中だそうだ。またSH002では表示にほとんど電力がかからない電子ペーパーを採用し、電源がOFFになってもパネルの発電効率や現在の通話可能な時間を表示する工夫をしている。
ただソーラーパネルを搭載するだけでなく、端末のトータルコーディネートとして、バッテリがいつどこでなくなっても安心、というキャラクターを持たせようとしているのが、936SHとSH002に共通するポイントと言える。
「これまでのシャープのソフトバンク向け端末では、ケータイを使う上での大きな不安であるバッテリーへの取り組みを進めてきました。たとえば931SHから始めたバッテリーメーターでは、電池をパーセント表示したり、ピクトの減り方も残量が1/3減ったら半分にするなどの工夫をしています。バッテリー不安への対策をもう一歩進める、と言う位置づけがソーラーパネルなのです」(澤近氏)
ただソーラーパネルがあるからエコだとか、便利、と言うわけではない。ケータイとしてどのようなシーンで使われるか、どのような場合に発電できると安心できるか。その端末のそもそもの電池の使い方はどうなのか。既に十分工夫が進んでいるが、それをユーザーに感じてもらいながらソーラーをプラスすることに意味がある。
さて長くなったので、端末の中身については次回に詳しく紹介する。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
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