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中国ソースコード開示 日本人がとるべき選択

2009年06月15日 09時00分更新

文● 小黒直昭

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中国に対し、条件交渉はいっさいせず

 日本では、経済産業省がこの事態を問題視。4月の日中首脳会談では、麻生首相が温家宝首相に対し、強制認証の撤回を促すほか、省の優先取り組み事項にも挙げている。こうした各国からの反応を受け、中国は同29日に、制度の1年の延期と、政府調達への限定を発表。これにより冒頭のような「なし崩し」観測も浮上した。

 が、「延期の公告にも『強制実行する』と明記してある」と、経済産業省は強く指摘する。実際、6月に入ってからも、来日した王岐山副首相に、二階経済産業相や経団連が制度の撤回やCCRA加盟による相互認証を促したのに対し、中国側は明言を避けた。

 頼りになるのは国際的な圧力だが、政府調達に限定したことで、政府調達を対象外とする技術的な非関税障壁を議論するWTOの多国間協議の場が使えなくなった。「まずは2ヵ国間協議の場で、ねばり強く中国に撤回を働きかけると同時に、日ごろの国の間のチャンネルなどを活用し、各国に連携を呼びかける」(経済産業省)という。

 中国の政府調達に関する貿易統計は存在しないものの、中国の政府調達は広いのでその額は膨大なものになると見られる。また、例に挙げたように、いつ輸出した製品が政府調達の対象になるかもわからないというリスクを、企業側も負うことになる。結果、輸出は先細る。

 今回、いくつかの取材申し込みをしたが、制度の対象となる企業や業界団体からは、意外なほど声が聞こえてこない。中国が怖いというよりは、制度詳細が明らかでないため答えようがないということだが、経済産業省は「条件の交渉は一切していない。このような制度は導入しないよう求めるというのが日本の主張だ」という。中国の意図について聞いたところ「中国はITセキュリティの確保が目的だと説明している。しかし、そのための法により、中国は先端的な海外製品を入手できなくなり、自分の首を絞めることになる。我々は、この矛盾もねばり強く中国に説明していく」との説明だ。

 あるいは中国は、民間企業の出方を観測しているのかもしれない。ダメなものはダメという声を、企業側も上げることが必要ではないだろうか。


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