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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第5回

AMDのデスクトップ向けロードマップを整理

2009年06月15日 16時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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アーキテクチャー混在で混乱するSempron

Socket 939時代までのAMD CPUのブランド別推移

Socket 939時代までのAMD CPUのブランド別推移

 話をAthlon 64に戻そう。そんなわけで、デスクトップ向けはしばらくSocket 754のAthlon 64でしのいでいたAMDだが、2004年になってようやく、DDRメモリー2チャンネルのSocket 939の製品を投入する。この結果、デスクトップ向けにはSocket 754とSocket 939の製品が混在することになる。この状況に輪をかけてややこしくしたのが「Sempron」である。

 AMDは「K7アーキテクチャー」(Athlon)の時代、メインストリーム向けの「Athlon」と、バリュー向けの「Duron」ブランドで製品を投入する。だがDuronは最終的に成功せず、撤退を余儀なくされた。SempronはこのDuronの後継というべきポジションのCPUであるが、当初はK7アーキテクチャーのSempronがまず投入され、すぐにK8アーキテクチャーのSempronも投入された。

 しかも、K7のSempronとK8のSempronが同じモデルナンバーを持つというケースまであり、かなりの混乱を招いた。SempronのK8版は当初Socket 754で投入され、この時点では「メインストリーム=Socket 939、バリュー=Socket 754」という、一応は論理的に正しい製品のセグメント分けがあった。ところが、この区分けもSocket 939版のSempronが投入されて崩壊する。要するに、DDRメモリーの世代のAMDのデスクトップ向けプロセッサーは「激しく混乱していた」と総括しても、そう間違っていないほどの状況だった。

 とはいえ、混乱の中でもデュアルコアの「Athlon 64 X2」を投入するなど進化もしていたし、また製造プロセスの観点でも、130nm SOIに続き90nm SOIの製品が投入された。プロセスは細かくリビジョンアップが繰り返され、そのたびに少しずつ省電力化・高速化が進んでいた。単に標準製品のみならず、低消費電力版なども投入され、この結果、同じ動作周波数でもTDPが複数用意される事もあった(2GHz動作の「Athlon 64 X2 3800+」の場合、35W/65W/89Wの3種類が存在する)。


Scoket AM2でラインナップを整理

AMDの製品ブランド別ロードマップ

 混乱したラインナップが整理されるのは、2006年5月である。AMDは従来のSocket 754/939/940に代わり、新しい「Socket AM2」を投入する。ピン数的には940ピンだが、従来のSocket 940との互換性はない。Socket AM2はDDR2メモリーをサポートしたCPU向けとなっており、これにあわせてOpteron向けも、1207ピンの「Socket F」(1207ピン)に変わった。

 このSocket AM2は、Athlon 64 FX/Athlon 64 X2/Athlon 64/Sempronのすべてに共通のソケット形状で、その登場でやっとプラットフォームが統一化されたことになる。

 これに続き、2006年末から順次、65nm SOIプロセスを使った製品の投入が始まる。まずはAthlon 64 X2の製品ラインで始まり、ついでAthlon 64、最後がSempronという形になる。ちなみにAthlon 64 FXの製品ラインは、90nm SOIのSocket AM2対応品まではリリースしたが、そこで製品ラインがいったん終了となり、65nm SOI製品はリリースされなかった。

Quad FXプラットフォームのサンプル

2006年11月に公開されたQuad FXプラットフォームのサンプル。CPUはAthlon 64 FX-70×2

 もともとAthlon 64 FX自体が、Opteronをデスクトップ向けに投入するというための苦肉の策的なシリーズであった。また、デスクトップ向けのデュアルCPUプラットフォームとして打ち出した「Quad FX」も、ATXマザーボードのフォームファクターにデュアルCPUと4チャンネルのメモリー、さらにデュアルGPUという構成は無理が多かったためかさっぱり続かなかった(ちなみに、Quad FXへの対抗でインテルがリリースしたプラットフォームが「SkullTrail」だが、マザーボードはATXよりも一回り大きくなった)。これにより、「もはやAthlon 64 FXのラインナップを維持する必要はない」と考えられたようだ。

 さてその一方で、2007年末にAMDは、クアッドコアCPUの「Phenom」を発表する。最初にリリースされたのは4コアの「Phenom X4」で、ついで4コア中1コアを無効にした3コア構成の「Phenom X3」もリリースされた。ただ、これらは消費電力がかなり多いという問題を抱えており、最終的にはプロセスを45nm SOIとした「Phenom II」の登場で、問題がやっと解決する。

2007年11月に発表された「Phenom」のパッケージ(左)とダイ写真

 また、Phenom II登場に前後して、プラットフォームをSocket AM2から「Socket AM2+」に移行し始める。Socket AM2はDDR2メモリー、この後登場する「Socket AM3」はDDR3メモリーのプラットフォームで、この間をつなぐのがAM2+という事になる。

 Socket AM2とSocket AM2+、Socket AM2+とSocket AM3には後方互換性がある。例えばSocket AM3対応CPUの場合、Socket AM3マザーボードを使えばDDR3メモリーを、Socket AM2+マザーボードを使えばDDR2メモリーを使える仕組みになっている。2009年に入り、AMDのデスクトップ向けCPUは、すべてSocket AM3対応に切り替わりつつあるといったところが現状である。

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