では、どういったところが開発者に響くのだろう。iPhoneについては別の記事に譲り、ここではMac OS X自体について振り返ってみよう。
Safari 4とJavaScriptの高速化
Safari 4は、基調講演の終了と共に配布が始まったウェブブラウザーだ。
閲覧履歴を 「CoverFlow」でグラフィカルに一覧することができるようになったことに加えて、プラグインがクラッシュしてもブラウザー全体が落ちないように隔離された実行をサポートするなど、普通のユーザーにとっても利便性が向上した。Snow Leopardでは標準ブラウザーとして搭載されるのはもちろん、TigerやLeopard、Windows向けもリリースしている。
こうした改善は、もちろん開発者にも利点がある。隔離実行があることでより果敢にプラグインの開発が可能になり、またWindows版の存在は、決してMacだけではない環境で比較検証をするのに便利だ。
ただ、開発者から見れば一番の利点は「HTML5準拠」と「JavaScript実行の高速化」であろう。
HTML5では、ウェブアプリケーションがブラウザー側にデータを保管できる「LocalStorage」機能や、mediaタグといった魅力的な新機能が用意されている。Gmailのようなウェブアプリケーションを、オフラインでも利用できるようになったり、プラグインに依存しない動画の再生が可能になるのだ。
また、JavaScriptでは、「Internet Explorer 8」の7倍以上の速度で実行できるようになった。よりレスポンスの速い動的なユーザーインターフェースを用意したり、より複雑で高度なウェブアプリケーションの開発が可能になるだろう。
AJAXの普及以降、ウェブブラウザーがアプリケーションの開発基盤となって久しいが、さらにローカルアプリケーションに近いことが可能になる、ということだ。
QuickTime X
QuickTime Xは、リファインされたQuickTimeだ。これまでのQuickTimeは、古いMac OSのコードを含んでおり、必ずしも最適であるとは言えなかった。例えば、Mac OS譲りの扱いにくいAPIや、構造的な原因からくるハードウェア支援機能の使いにくさなどは改善の余地があった。
アップルはこれまでも、古いAPIをCocoaのオブジェクトで包んで扱いやすくした「QTKit」を作ったり、64bitのライブラリでは古いAPIの使用を禁じて(Carbonアプリの場合はわざわざブリッジを通じてCocoaのQTKitを使えと強制することで)古いAPIの撤廃の努力をしていた。またコーデックやアプリケーションが個別にハードウェアの支援機能を利用するなどの対策もとっている。しかし、こうした場当たり的な対応には限界がある。
そこで、いちから作り直したのがQuickTime Xだ。
これまでのQuickTimeは、静止画の展開やユーザーの入力に対応するといったインタラクティブな処理などもサポートしていたが、QuickTime Xではどうも動画と音声の再生に注力して、古いコーデックを捨てて最新のMPEG-4などに絞り込むようだ。そして、近代的なAPI、ハードウェア支援機能の活用、ColorSyncによる色調整、そしてHTTPストリーミングのサポートといった点を強化している。
より手軽に動画や音声が使えることで、アプリケーションでも動画や音声の積極的なサポートが増えることが期待される。
例えば、システム環境設定にある、マルチタッチのタッチパッドの設定がいい例だろう。文字や静止画ではわかりにくい、3本指、4本指を使ったマルチタッチを、適切な動画を再生することで非常に分かりやすく説明している。
※中編に続く
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