実は、ゲームミュージックに関しては「世界初」だらけなんですよ
「個人の方、法人の方から、音楽が気に入ったので利用したいと言われるのは、企業というよりむしろゲームの制作者として、本当に嬉しいことなんですよ。それなら、どうせ作ったものは使ってもらおうと思ったんです」
近藤氏はそうさらりと言ってのける。その自信の理由の1つには、制作してきたゲームミュージックへの評価の高さがある。
「ファルコムで開発してきたRPGはドラマティックなシーンが多いのが特徴で、ゲームミュージックもそれにあわせてドラマティックなものを使っています。ゲーム1本におよそ50曲を使っていて、楽曲としての種類も非常に多いんですよ」
泣ける曲や楽しい曲、切ない曲など、楽曲には感情を強く揺さぶるものを数多く採用した。ロックにジャズ、クラシック調のものまで、音楽ジャンルもありとあらゆるシーンに合わせたものを揃えている。「作ったことがないのはラップくらいのもの」と近藤氏は笑う。
そのためBGMとしての需要は非常に高く、「演劇の上演時に流したい」「テレビ番組の劇中に使いたい」など、法人から個人まで、使用許可を求められるケースがひっきりなしに続いていた。
だが、法人の場合は契約書を取り交わせば済むが、個人に対して楽曲の使用を公に認めるのは難しい。法人と個人の線引きがあいまいなこともあり、事実上は使用を黙認するケースもあった。それなら開放してしまおうという意見が出たのが今から半年前のことだ。
「それって世界初だよね? なら先を越される前にやらなきゃ、という話になりまして」
その驚くほどの瞬発力は、それまでもゲームミュージックに関して多数の「世界初」を手がけてきた同社ならではともいえる。
「ゲームミュージックにボーカルを乗せた楽曲を作ったのも、ゲームミュージックをCDレーベルとして立ち上げたのも当社が初めてですね。いずれも世界で初めての試みでした。そういった先進的なことをやっていきたいという空気が社内全体にあるんですよ」
プチコラム:ファルコムファンなら「ダイナソア」を聞き逃すなっ!
ファルコムゲームミュージックと言えば、「イース」「ソーサリアン」の音楽を手がけて名高い古代祐三氏は外せない。筆者はソーサリアンのCD(MUSIC FROMSORCERIAN、「天の神々たち」の曲がバグってるアレ)は今でも大事に持っている。イースのエンディングには思わず涙したものだ。
しかし、隠れた名曲の多いゲームとしてここで取り上げたいのは、「ダイナソア」である。「なにそれ? そんなゲームあったっけ?」とか言うなあぁ! ファルコム作品では希有な一人称3D視点(Wizardryみたいなもんである)のRPGで、べらぼうに広大なマップとシリアスな物語(無情で泣けるんだ)、登場人物の異なる裏シナリオの存在など、なかなか面白いRPGだった。……知名度はともかく。
暗く重厚で悲しい物語に合わせた音楽も美しく、一方で戦闘シーンの曲は軽快だったりと、「全篇これ名曲」と言っても過言ではないほど。そのうえサウンド トラックCD「ミュージック・フロム・ダイナソア」では、オリジナルの音源を元に左右の音域を広げる凝ったレコーディング処理を加えて響きをより美しくしており、まさに家宝もののCDである。
ゲーム自体の知名度が低いので、ダイナソアの音楽について語っても「ハァ?」という顔をされることばかりなのだが、今回のフリー化を機に、ダイナソアとその音楽の魅力がもう少し知られるようになると嬉しい。リメイク版「ダイナソア~リザレクション~」もあるしね。