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Interop Tokyo 2009 レポート 第3回

Interop Tokyo 2009特別レポート

ネットワーク全体が仮想化された世界に向けて

2009年06月10日 06時00分更新

文● あきみち 写真●森田兼次

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仮想化の最後の1ピースがそろう?

奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科准教授の門林雄基氏

 奈良先端科学技術大学院大学の門林雄基氏は、現状のコアにおける仮想化としてレイヤ1ではラムダレベルで、レイヤ2ではVLANで実現されていることに言及しつつ、「今までなかったのは、複数のルータインスタンス(機能)を1つのルータ内に構築したり、アドレス体系が異なる複数のネットワークを1つのルータに束ねるというところだと思います。やっとレイヤ3の部分がレイヤ1/2のイノベーションに追いついて来たのかもしれませんね」と、これから開始されるであろうレイヤ3仮想化技術への期待を示していた。

 確かに、ここ数年のコアネットワークでの仮想化技術発展は目覚ましい。5年前には想像もできなかったネットワークオペレーションが現実のものとなりつつあるのかもしれない。

会場で仮想化を体験するにはどうすればよいか?

 実際に会場で仮想化されたネットワークを体験するにはどうすればよいのだろうか?慶應義塾大学の重近範行氏は次のように述べる。

慶應義塾大学の重近範行氏

 「仮想化は外から見てもわかりません。心の眼で見ていただく形になると思います。というのは冗談で、確かにルータの中にあるコンフィグを“見ていただく”のは非常に難しいですね。恐らく会場で配布されていたり展示されたりしているトポロジ図をご覧いただく形になると思われます」

 そのほかに、ShowNetウォーキングツアーに申し込んだり、ハンズオンやコンファレンスで説明を聞くという方法もあるようだ。個人的には、参加者が多い場合は抽選となってしまうが、無料で申し込めるShowNetウォーキングツアーがよいと思った。ShowNetウォーキングツアーは、実際の機器を見ながら会場を歩いて説明を聞くことができるツアーである。

 仮想化された状態を来場者が知るには「心の眼」が必要であるというのは、非常に納得できる。昔は配線を見れば機器同士の接続状況やネットワーク構成が予測できたが、ある時から配線だけではまったくわからなくなってしまった。これは、VLANが多用され始めた時期からの傾向ではないだろうか。

 そのうえさらに、今回のテーマは仮想化である。ShowNetはさまざまな組織から集まったエンジニアが短期間でネットワークを構築するため、「心の眼」を全員で共有することが重要となる。「心の眼」をスタッフ内で共有するInteropなりのノウハウを続けて聞いた。

 「Interopでは、毎年ネットワーク図の書き方に非常に大きな労力をかけています。物理的な構成と論理的な構成をさまざまな手法で二次元の紙の上に表現してあります。多くの組織から集まったNOCメンバーが情報を共有するには、このネットワーク図が大きな役割を占めています。ネットワーク図を中心に行なわれているネットワークオペレーションはほかにはあまりないと思います。データベースではなくが中心なのですよね。データベースはあるにはあるのですが、NOC同士のコミュニケーションの中心はあのです。あの図はInteropの見える化の結晶といえますね。」と重近氏はいう。ネットワーク図をつねに最新の状況に保つための専用NOCも存在しているらしい。

ShowNetでは、ネットワーク図を見ることがすべての基本といえそうだ。

管理者の仮想化?

 今回のShowNet NOCの間では、日常会話の中でも「仮想化」がブームであったようだ。「ミーティングに出られない時には、“お前、自分を仮想化しろよ!”といわれたりしました」と堀場氏はいう。将来的には管理者も仮想化して、Airネットワーク管理者という技術が確立されるのかもしれない。

 そう考えると、将来的には記事を書くライターも仮想化されるのだろうか?そもそも、自分が今生きている世界も仮想的なものなのではないかとさえ思える。しかし、そのような考えが頭を巡ったあとに、そういえばそんな映画があったなぁと回想した。今後、ネットワークの世界はどこまで仮想化されるのだろうかと考える今日この頃である。

筆者紹介:あきみち

 「Geekなぺーじ(http://www.geekpage.jp/)」を運営するブロガー。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。最近は通信技術、プログラミング、ネットコミュニティ、熱帯魚などに興味を持っている。Twitter IDはgeekpage(http://twitter.com/geekpage/)。


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