マルチコア対応を加速させるGCD
Snow Leopardの新技術にも触れている。最大の変化はOSの64bit対応だ。Snow Leopardでは、メインメモリーが最大16TBまで扱えるようになり、1クロックサイクルで最大2倍の命令を処理できるようになるという。
また、個々のアプリも含めた、Mac OS X全体をマルチコアCPUに対応させる「GCD」(Grand Central Dispatch)という技術が加わっている。
CPUのクロック周波数が毎年倍に向上して、ソフトの処理が高速化されたというのは、もはや過去の話。CPUクロック周波数が頭打ちになってマルチコアCPUを採用するようになった現在、高速化には、各アプリが「スレッド」に対応する必要がある──。基調講演ではそう語られた。
スレッドは簡単に言えば、ひとつのプログラムを実行する際に細かく分けて、CPUで同時に効率よく処理させる方法だ。各開発者が自分のアプリをスレッドに対応させてマルチコアCPUをフルに活用できるようになれば、処理が速くなる。ただ、一方でスレッドのプログラミングは難しくて負担が大きいので、開発者はマルチコア対応に消極的だ。
そこで、開発の負担を軽減するためにGCDをSnow Leopardに搭載。スレッドの処理をアプリではなくOSで実行するようにして、マルチコアCPUのパワーを最大限まで引き出す。
またグラフィックアクセラレーターを利用することで、描画以外の処理を自動的に負担させる「OpenCL」を紹介した(関連記事)。
Snow Leopardの最後には、マイクロソフトのExchangeサーバー対応を解説した。予定や会議の出欠はカレンダーアプリの「iCal」で、タスクやメモはメールソフトの「Mail」で行なう。設定はシンプルで、Exchangeサーバーのユーザー名とパスワードを一度入力するだけで、各アプリが自動的に設定を完了するそうだ。
Snow Leopardの価格は129ドルで、既存のLeopardユーザーはわずか29ドルでアップグレードできると発表すると、会場からは大きな拍手が起こった。発売は今年9月の予定で、開発者は今日からファイナルバージョンのSnow Leopardをダウンロードできる。
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