デジタルキャンパスに宿る
カルチャーとメッセージ
僕は1999年から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで学生生活を過ごし、大学院、研究員として現在に至る。ちょっと古い話ではあるが、少し懐かしい話を交えて振り返ってみたい。僕のデジタルキャンパス当時1年生で必修だったのが情報処理の授業。
特別教室に並ぶSunのワークステーションの前に座り、ファイル操作などはコマンドで操り、メールはemacsやmnewsで読み書きし、レポートはLaTeXで書く訓練を受けた。手打ちのHTMLとJavaアプリで自分のホームページを持たされ、1年生の春学期が終わる。
ワークステーション上では、「kste」と呼ばれる、大学内で誰がどのホストでログインしているかを表示してくれるプログラムやphoneと呼ばれるプレーンテキストによるチャットなどのコミュニケーションツールが使われていた最後の世代だった。
時代はちょうどノートパソコンの性能が向上し、大学内に無線LANが敷設され、皆が無線LANカードを共同購入のノートPCに差し始めた頃。ワークステーションの前に座るよりも自分のノートパソコンを開く時間が長くなり、同時にワークステーションを全体としたツールではなく、ICQやMSN Messengerなどのコミュニケーションツールへと移行していく。
大学の体育の選択はネット経由で行える仕組みになっており、予約開始直前には一斉にログインして「スポーツマッサージ」や「気功」などの人気コースが一瞬にして埋まる。あるいはサークルはメーリングリストで情報共有をし、課題はメールで提出。間に合わない学生はケータイメールで800文字のレポートを書いてくることもあった。
このように、学部やキャンパスの規模でのデジタルツールの普及や変化を追いかけていくと、もちろん一面的ではあるかもしれないが、ユーザーたる学生がどのような行動をするか、どんなツールやメディアの選択をするか、そしてどんなカルチャーが生まれるか、というものを観察できる。
では、青山学院大学のように、日本でiPhoneを本格的に導入するカタチでデジタルキャンパスを構築すると、どのような学生生活やカルチャーが生まれるのだろうか。海外の事例とも照らし合わせながら、非常に興味深く観察していきたいと思っている。
飯島氏によると、早速iPhoneのサポートを行なうボランティアの学生が各学年から10人ずつ集まったそうだ。教員だけでは広く活用する学生を増やすには手が足りない、ということで募ったところ、あっという間に集まったという。「ユビキタスの最先端に足を踏み入れたのだ、という実感を持っていて、それをサポートしていきたい」と非常に高い意識を持っている学生の存在は、デジタルキャンパスの構築を目の前に、非常に頼もしい。
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