このページの本文へ

企業・業界レポート 第9回

誰も語らない ニッポンのITシステムと業界

「メインフレーム終焉」のウソ(後編)

2009年07月07日 09時00分更新

文● ASCII.jp 聞き手●政井寛、企画報道編集部  協力●アスキー総合研究所 遠藤 諭

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

情報システム混乱の原因は
オープン系にあるかも?


政井氏

「370の呪縛を1回目の対談で話しましたが、クラウドが吸収してくれる可能性は無いですか?」(政井氏)

島田 オープン系システムの問題で、全社的な理解をなかなか得られないのは、サポート切れ対応やバージョンアップ対応などがあります。オープン系システムを構成する一部のハードウェアやソフトウェアでサポート切れやバージョンアップなどが起きると、構成している他のハードウェアやソフトウェアと互換性がなくて、すごくコストがかかる場合がある。小さな部分だけを変えようと思っても全部変えなくちゃいけない。我々でもなんで? ……と思ことがありますよ。ましてやビジネスの経営陣にそれを理解してもらうのは難しい……。

――その点はどこのユーザーも悩んでいるようです。ほんの一部分のバージョンを上げようとすると、すぐにもう、全体のインフラをワーッと変えなきゃいかんとか。何億とかすぐかかってね、表向きの機能は何にも変わらないのに予算の申請などできない話です。しかしそれをしないとシステムの寿命はすぐに終わる。

島田 オープン系というのはそういう呆然とすることに直面することがありますね

――そうですよ。だからそういう意味では以前のメインフレーマーというのはアップワードコンパチブルを保証して、そのハードウェアそのものやソフトの値段はたしかに高かったんだけど、そういう安心感を与えてくれましたよね。

島田 そうですね。安定性、継続性に対する信頼感は、上位互換を保証してくれていたメインフレーム文化が一枚も二枚も上という感じがします。

 たとえば、電子メール情報やログ情報を考えていただければと思います。社会の成熟度の向上に伴って企業サイドはいろいろなことを想定しておく必要があります。何かの時の対応のために「メール情報」や「操作ログ情報」はある程度の期間保持し続ける必要がある。その時々の技術で保存するわけですが、心配なのは必要な時に必要な情報が的確に取り出せるのだろうかと言うことです。長期間保存のためには、圧縮したり暗号化したりしますが、はたして将来読み出せるのか? それをだれが保証してくれるのか? すごく心配です。

 メインフレームの世界であれば、なんとなくまあ大丈夫だろうなって気がしますけれども、オープン系ですと暗号化ソフトもバージョンが変わっているだろうし、圧縮技術もすごく変わっている……と考えると、技術的にどう継続性を確保できるのだろうかと思ってしまいます。

――そのあたりの話は、運用側に立ってみるか、開発側で見るかという点と、ユーザーがどういう業務をやってるかという点とか、そういうことによって評価が全然変わってきますね。

島田 開発の視点、運用の視点で大きく変わります。また、開発対象システムの種類や大きさ、社会への影響度合いなどによっても異なる気がします。いろいろと考慮点が多くて、これだという正解ってなかなかないような気がしますね。難しいですね。

――オープン化が混乱の原因のような話になりそうですが、オープン化当初に構築したシステムは今どうなっていますか?

島田 使われなくなっているものもあれば、すっかり業務プロセスの中に溶け込んで無くてはならないものになっているものもあります。中には、細々と使われ続けているものもありますが、その中に課題を抱え込んでいるものがあります。例えば、開発と運用の分離が明確に出来ていないとか……。

 自分が作って自分で動かすって、いかにも効率的だと思うんですよ、早く対応出来る感じもしますし、短期的な効率性と言う観点では抜群にいい。しかし、そこにITガバナンスを追求しようとしたら、「開発と運用の分離」が出来ていない。牽制が効かないということになる。

 開発と運用の分離を明確に行なうためには、担当も分け、環境も分ける必要があります。中途半端な状態で「開発と運用の分離」を行なおうとすると、アクセスコントロールなど、すごく複雑な運用が求められることになります。

次ページに続く

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ