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四本淑三の「テレビを捨てよ、動画サイトを観よう」 第6回

なぜ我々は「けいおん!」に萌えてしまうのか?

2009年06月07日 14時00分更新

文● 四本淑三

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我々はこれまでも「楽器娘」に萌えてきたのだ

 YouTubeやニコニコ動画に投稿された「やってみました」系の動画は大抵ベッドルームから発信されているし、それを再生する側もまた自室のベッドルームで見ている。それが液晶を隔てた向こう側に自室が拡張したような距離感のなさを生む。

 そんなところに音楽をやっている可愛い女の子が登場するものだから、我々はまったくなす術もなくやられてしまうのだ。世界中のカワイコちゃんが僕だけのために歌ってくれている。そんな錯覚を持ってしまうくらいやられてしまう。

 以前に書いた「ウクレレ娘」にもその効果が顕著なわけだが、エレクトロ・ポップの分野にはLittle Boots*1がいる。YouTubeでも大人気だったが、今年の「BBC Sound of 2009」*2で1位となり、サマーソニックにもやってくるという。メジャーシーンでもブレイクする可能性が高い。

 TENORI-ONやStylophoneのようなモバイルガジェット系の楽器を使っているのは、YouTubeで音楽をやる人のセオリー通り。だが私がやられたのはそれを生足で弾いているこの動画だ。

 彼女が弾いているのは「microKORG」というミニ鍵仕様のシンセで、日本のシンセ通は「マイコル」という略称で呼ぶ。小さく軽いせいか、女の子ウケが良いらしい。たとえば三人組のシンセ女子Au Revoir Simoneや、カナダのLIGHTSも使っている。彼女たちを総称して私は「マイコル娘」と呼んでいる。

 「けいおん!」が空前のブームとなり、秋山澪と同じレフトハンダー仕様のJazz Bass*3がバカ売れ中というニュースを聞くに及び(関連記事)、動機は何でもいいじゃないか、楽器を買ったらちゃんと弾けるようにすればいいじゃないか、右利きなのに左利きの楽器を買った人もどうにかすればいいじゃないか、曲を作ってアップしていこうじゃないか、と思うようになった。

 そんな風に優しい態度を取ってしまうのは、かく言う私自身がまんまとマイコル娘たちにやられ、新型のmicroKORG XLを買ってしまっているからである。

*1 Little BootsはVictoria Heskethの個人ユニット名。1984年生まれの25歳。2008年までDead Discoというグループで活動していた。

*2 イギリスの音楽関係者による推薦で決定される。過去1位に選ばれたのは2006年がCorinne Bailey Rae、2007年がMika、2008年がAdeleとブレイク率は高い。

*3 秋山澪が弾いているのはFender Japan JB62-US 3TS。

四本 淑三(よつもと としみ)

1963年大分県生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科講師。高校時代に音楽雑誌へ投稿を始めたのを契機に各種のコンテンツ制作や執筆作業に関わる。去年は動画サイトに上げたKORG DS-10の動画がきっかけで、KORG DS-10の公式イベント「KORG DS-10 EXPO 2008 in TOKYO」に参加。その模様はライブ盤として近日リリース予定。

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