ShowNetの試行錯誤と副産物
多くのISPはIPv4アドレス枯渇が差し迫っていることを知っている。しかし、インターネットはすでに社会インフラとなっているため、多くのユーザーを抱えたリアルネットワークでIPv6やラージスケールNATの実験を行なえる状況にはない。
一方で、ShowNetは10カ月以上の期間をかけて多くの専門家が集まってネットワーク設計を行なう。このため、さまざまな機器ベンダーやISPエンジニアは、ShowNetで行なわれた結果を参考にしつつ、IPv4アドレス枯渇対策を考えるという。ある意味、ShowNetが国内ISPの動向に大きな影響を与えているといっても過言ではない。
さらに、ShowNetでの試行錯誤が産み出した「副産物」もあるようだ。ShowNet NOCメンバーの長谷部克幸氏によると、「IPv6で受け取ったものをIPv4に変換しつつロードバランスするという機能を持つ機器が登場しました」という。
確かに、IPv6化されていないWebシステムは多い。ソフトウェアやハードウェアにいっさいの変更を加えず、Webサーバの手前に特殊な機能を持つロードバランサを置けばよいという発想の転換は面白い。
IPv6は本当に利用されるのか?
このように、IPv6化へのピースは確実にそろいつつあるように見える。しかし、一方でIPv4は永遠に利用され続けるのではないかとの疑念は拭えない。その疑問をぶつけてみた。
前出の宍倉氏はこう述べる。「個人的な予想ですが、非常に長い期間でみればIPv4アドレスの利用は徐々に減って行くのではないでしょうか」。
さらに、かつてIPXからIPv4へと企業内通信の世界でのプロトコル利用が変化していった事例を挙げながら「IPv6を利用する組織は、最初はIPv4とIPv6の両者を運用するでしょうが、デュアルスタックでの運用負担に耐えかねてIPv6のみを使うようになり、いずれIPv4は減っていくのではないかと予想しています」と締めくくった。
今年のShowNetにて、2010年のIPv4アドレス枯渇対策の最前線となる技術に触れるのも面白そうだと思う今日この頃である。
筆者紹介:あきみち
「Geekなぺーじ(http://www.geekpage.jp/)」を運営するブロガー。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。最近は通信技術、プログラミング、ネットコミュニティ、熱帯魚などに興味を持っている。Twitter IDはgeekpage(http://twitter.com/geekpage)。
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