往年のオーバークロッカーには
懐かしい「ペルチェ素子」を装備
本体サイズ以外にも本製品には「ペルチェ素子」を採用しているという特徴がある。ペルチェ素子とは、2種類の金属板の接合部に電流を流すことで、片方の金属からもう片方の金属へ熱が移動する「ペルチェ効果」を利用した冷却装置だ。つまり、ペルチェ素子は電流を流すことで片方の面は発熱し、もう片方の面は吸熱され冷やされるわけである。流れる電流量などにも左右されるが、冷える側の金属板の温度は氷点下にすることも可能で、モーターやコンプレッサといった可動部分や冷却触媒も必要ない。この静かでコンパクトなペルチェ素子を、ヒートパイプ冷却に利用しているというわけだ。
CPUクーリングにペルチェ素子を用いることは、CPUがPentiumⅡやPentiumⅢの時代に一時期ブレイクしたことがあったが、その後ぷっつりと姿を消してしまった。これは吸熱面が室温より低くなると結露が発生してしまうこと、そしてペルチェ素子自体が大きな電力を使用することが原因である。CPU冷却に用いるペルチェ素子の使用電力は30~60W程度あり、ヒートシンク部分にはCPUの発熱+ペルチェ素子の発熱を放熱する性能が求められる。もし放熱部の冷却が追いつかないと、熱が吸熱部に伝わってしまい冷却効果が著しく下がってしまう。こうした扱いづらさも手伝って、ペルチェ素子はブームにはなったものの、結局使うのは本当に冷却道を突き進む人のみになってしまったわけである。
本製品は、結露対策として温度センサーによるコントロール機構を搭載する。CPU直上にあるセンサーでヒートパイプの熱を監視し、初期設定の温度より低くなった場合にペルチェ素子への電力供給を遮断し、ヒートパイプの熱を上げて結露を防ぐ仕組みだ。電源配線を見る限り、本製品のペルチェ素子はCPU直上ではなく、設置したときにリアパネル方向に位置する側に斜めに取り付けられており、冷却板には4本のヒートパイプ、排熱板にはヒートパイプ数本が3ブロックある放熱フィンの1つと繋がっている。つまり、本製品は通常のCPUクーラー同様にヒートパイプ&放熱フィンによる冷却がメインで、ペルチェ素子による冷却はアシスト的な役割と予想される。
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