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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第49回

ココログとGizmode Japanを作った元祖ブロガー

2009年06月01日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「小鳥ピヨピヨ」はココログスタートで終わるはずだった


―― 小鳥ピヨピヨは2003年7月スタートですが、これは会社にブログ事業をプレゼンするためのサンプルとして始めたんですか?

いちる というよりは、どのブログソフトを採用するか自分で試すためのテストブログという感じでした。ただ、単にシステム利用テストではなく、一般のネットユーザーに向けて「ブログのショーケース」として機能するようなコンテンツを書こうとはしていました。

 当時のブログはITに詳しいギークのおもちゃといった雰囲気があったので、ブログサービスを立ち上げたとき、皆に「色々見てみたけど、なんか難しそうなものだから遠慮します」と言われる不安を感じていました。

 そうではなくて、「ブログはもっと簡単に使って楽しめるものなんだよ」と知らしめるために、意識的に難しい表現は避けて、誰でも楽しめる内容を心がけましたね。


―― そのコンセプトは今でも根底にあるんですか?

いちる いえ、ブログが浸透した今はショーケースなんて不要ですからね。というより、本当はココログが始まった時点で止めようと思っていたんですよ。ただのサンプルブログだから。

 ところが、ココログスタートの直前に突然恐ろしくアクセスが伸びたんです。それまで1日90PVくらいだったのが、いきなり20万PVまでいって(笑)。「スネ夫を正面から見たら」という記事が、たくさんの大手ニュースサイトに取り上げられたんですね。それで興奮しちゃったわけですよ。それからは、もう自分の楽しみのためにやっていますね。

「スネ夫を正面から見たら」。ブラウザ上に描いた絵を3D表示する無料サービス「Teddy」を紹介する際、スネ夫のイラストを描いて、様々なアングルを披露した。この記事がなければ、小鳥ピヨピヨはとうの昔に終了していた可能性が高い


―― では「Gizmodo Japan」を始めたきっかけを教えてください。

いちる 僕がニフティを辞めた後、ココログで何度もお仕事させてもらったインフォバーンのコバヘン(小林弘人編集長、当時)から「今度Gizmodoの日本語版をやるけど、好きに改変しちゃっていいから編集長やってみない?」と誘われたんです。2006年のことでしたね。

 元のGizmodoはアメリカのガジェット紹介ブログですが、日本語版は掲載する内容やコンセプトを僕の方で変えちゃっていいというオファーだったんですよ。だから、アメリカ版のGizmodoと読み比べると分かるんですが、日本語版は全然違います。まれにそのまま翻訳した記事もありますが、同じことを扱っていても記事の内容はまったく別というのがほとんどですね。

 米Gizmodoって「こんなバカなガジェット誰が使うの?」みたいなノリで、否定したり責めたりすることも多いんですよ。でも、それは日本では受けないだろうと思ったんです。同じこと言うんだったら、「どうしてもコレの良さが分からない。僕が悪いんでしょうか……」みたいなニュアンスにしたほうがいいなど、色々と感じるところがあるわけです。そういうトーンをまず僕が作って、そのトーンを他の方にも守って書いてもらっています。

Gizmodo Japan。海外のガジェットネタを中心に扱っているが、日本の物事を扱う記事も増えている。自身が編集長に選ばれたことについて、いちる氏は「ガジェット好きだけど、海外情報マンセーでもない。そういう僕を編集長にすることで、コバヘンはアメリカに負けない独自性を作ろうと考えたんじゃないですかね」と語る


―― 確かに、記事に翻訳くささがないんですよね。ちなみに、チームを組んでブログを運営する場合、個人ブログとどんな違いがありますか?

いちる チームでやるときは、ブログに個人の世界観をあまり反映できないということを最初から思っておいたほうがいいですね。60%くらい思い通りに進んでくれれば、「まあいっかー」と思うくらいがちょうどいいです。メンバーが自分の自由領域を持っていて、自由にできるようにしておくのが大事ですね。会社組織でもそうですけど。

 ただ、一般的な会社と違うのは、単純に運営だけしていても「一緒にやっている」感が沸かないんですよ。メンバーは別々の場所で別々の記事を書いていくわけだから、やっていること自体に個人ブログと大差はないんです。だから、チャットルームを作って定期的に話し合ったり、月に一回会ったりして「僕たちチームでやっているよね」とお互いが意識することが重要でしょうね。そうすると殺伐としない。

 Gizmodo Japanの場合は、月に1回のミーティングが終わったあとに、必ず皆で飲みに行きます。あと、スカイプのチャットルームで、ずーっとくだらない話をしたり。そうやって仲良くなっていると、同時に同じネタを書いてしまったときも「あ、いいよいいよ。俺のは没にしちゃって」と素直に言えて、ケンカにならないわけです(笑)。

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