最短で2011年の1月に実現か!?
── 日本にフェアユースを導入するにあたって、何が問題になるでしょうか?
津田:現在、フェアユースが一番大きく認められている国は米国ですが、日本と米国では法律や司法制度のありかたが大きく異なっています。米国型のフェアユースは「裁判社会」の米国だから成立するという意見もありますから、そのままの形で日本に導入するというわけにはいかないでしょう。
法律というのは、同じように思えても実は国によって微妙に違っているんです。大きく分けると、ドイツやフランス、日本などが採用している「大陸法」と、英国・米国の「英米法」というふたつが存在しています。大陸法は法律に書かれた条文を重視するのに対して、英米法は条文に加えて過去に裁判で下った判例も法律として見なすという違いがあります。
で、米国での著作権法では、フェアユースの規定が曖昧な感じに記述されているんですよね。それでもフェアユースが成立するのは、「グレーな領域は裁判で解決しよう」という習慣があるからです。あとはYouTubeがメディアとして確立したように、グレーもしくは黒に近いサービスでも、それがビジネスとして金を生み出す可能性があれば認めるというビジネス文化もありますから、フェアユース的なものも生きてくる。
ちなみにドイツやフランスの著作権法はフェアユースを導入していません。フェアユース自体はないけれど、フランスの著作権法には「パロディー条項」というものを設けていて、一種フェアユース的な使い方も認めている。「著作物をこんな風に利用するんだったら、権利者に不利益はないよね」という感じで、割と曖昧に規定していますね。
── 日本版のフェアユースはどういう内容になりそうですか?
津田:日本版フェアユースを導入するにあたって、現在、ふたつの方針が出ています。ひとつは米国のように大きく解釈できるように、一般条項として入れるという方法です。もうひとつは、今までの日本の著作権法のように個別のケースに応じた制限規定があって、その最後に狭い形でフェアユースを盛り込むというやり方です。
でも実際、どちらがいいのかというのは、知財関係の弁護士、コンテンツビジネスに携わる人々、学者といった立場によって考え方が大きく違って、結論を出すのが難しい状況です。現状は骨子が固まらないまま「日本版フェアユース」という言葉だけが一人歩きしている。
ただ、さすがに知財本部から催促されていることもありますから法制小委には「フェアユースなんて絶対反対! 入れるな!!」というような立場の人はいない感じですね。もし法制小委での話し合いが順調に進んで方針が決定すれば、まず文化庁が法案を作ります。それを来年度の国会に提出して通れば、最短で2011年の1月から日本版フェアユースが導入されることになるでしょう。
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