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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第3回

Core 2 QuadからAtomまで インテルモバイルCPUの変遷

2009年06月01日 16時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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超低電圧版セグメントを急激に侵食する「Atom」

超低電圧版市場にも食い込んだ「Atom」

低消費電力で低価格を武器に、超低電圧版市場にも食い込んだ「Atom」

 インテルのモバイルCPUバリエーションの中でも、最後に登場したのが2008年に投入された「Atom」だ。このAtomも、源流をさかのぼるとPentium-Mにたどり着く。もともとPentium Mの超低電圧版(正確には超低電圧版Celeron M)を元に、インターネットアプライアンス機器など向けにリリースした「LPIA」(Low Power Intel Architecture)という組み込み市場向けプロセッサーが、このマーケットを切り開いたからだ。

Atomのロードマップ

Atomのロードマップ

 このLPIAの後継製品としてインテルが開発したのが、コード名「Silverthorne」ことAtom Zシリーズと、「Diamondville」ことAtom Nシリーズである。Silverthorneは「MID」(Mobile Internet Device、携帯型インターネット機器)向けで、より小型のパッケージとさまざまな動作周波数・消費電力のラインナップを揃えている。

Atom ZとAtom Nのパッケージサイズの違い

Atom ZとAtom Nのパッケージサイズの違い

 対してDiamondvilleは、やや大きめながら低コストのパッケージで構成される。特にネットブック/ネットトップ向けCPUとしては、このDiamondvilleを使うことが期待されていたが、実際には製品差別化などの理由によりSilverthorneを使うケースも少なくなく、結局インテルの目論見は微妙に外れた観がある。

 それはともかく、Atomはおおむね、同一周波数のCore 2の半分以下の性能でしかない。だが、動作周波数1GHz近辺の超低電圧版CeleronやCore 2 Soloと、1.6GHz~2GHzで動作するAtomを比べると、消費電力はほぼ同じで性能もそれほど大きくは違わない。そのため、従来なら超低電圧版が使われていたマーケットを、このAtomが大きく侵食しつつある。

 詳しくは後述するが、Core 2/Celeronは大きなプラットフォーム変更が待ち受けているのに対して、Atom系列は2009年後半にGPUやメモリーコントローラーをCPUに統合した「Lincroft」(本来はSilverthorne向けのコード名だが、Diamondville系列のコード名が不明なので便宜的に使う)に移行することが予告されており、比較的スムーズに移行すると予測されているからだ。

次世代Atom「Lincroft」とチップセット

2009年後半に登場予定の次世代Atom「Lincroft」とチップセットのLangwell。IDF Fall 2008での、ウルトラモバイルグループ担当上級副社長のアナンド・チャンドラシーカー氏による基調講演のプレゼンテーションより引用。Lincroft(CPU+GPU+MCH)とLangwell(I/O Hub)の2チップ構成で、クレジットカードサイズの「Moorestown」プラットフォームが構成できるという話。MID向けだが、おそらく同種のものがネットブックにも投入されるだろう

 2009年中には、超低電圧版CPUのラインナップはAtomに一本化されてしまう可能性も捨てきれないが、最終的には「OEMベンダーがどちらを選ぶか」にかかってくると思われる。つまり、「Core 2 Soloの性能がどうしても必要」とOEMベンダーが強く主張すれば、Atomとは別に超低電圧版のラインナップが残ると思われる。

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