このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

新型インフルのパンデミックに備えよ! 第2回

IT関連企業に緊急アンケート!

IT企業の新型インフルエンザ対策はこれだ!

2009年05月28日 06時00分更新

文● 佐久間康仁/企画報道編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

セキュリティー企業のパンデミック対策は?
――トレンドマイクロの場合

 フレックス制度を導入しているトレンドマイクロの場合は、電話会議システムWebベースの会議システムVPN等による社内インフラへの接続など、新型インフルの登場前からリモートワーカー対策を進めていたという。多様なインフラを整備することで、さまざまな社員の住宅事情に合わせられるほか、万一いずれかの回線が接続不能になった場合でも別の手段が利用でき、事業の継続可能性が高められるというわけだ。

 ちなみに、トレンドマイクロの主な回答は以下の通り。

新型インフルエンザの流行を想定したマニュアル・ガイドラインの策定は?
新型インフルエンザに限ったものについては、現在策定中ですが、危機管理マニュアル・ガイドラインがすでにあり、それをベースに対応する形で進めています。
そのほかの対応は?
オフィス内に入室する協力会社の方には、入室前の手洗い、うがい、作業時のマスクの着用を徹底していただくように依頼。来客の多い受付には、除菌空気清浄機を設置している

UC企業はもちろん、危機をUCで乗り切る
――アバイアの場合

 IP電話などを販売するアバイアは、こうしたUC(ユニファイド・コミュニケーション、一元的な連絡)ソリューションこそ最も得意とするところだ。平時(2006年以前)から全社員が在宅勤務可能な環境を構築しており、従業員も会社の電話をソフトフォンや携帯での同時着信で受けることに慣れているため、自宅待機が続く状況になっても混乱はないという。

 通話回線以外にも、会社からノートPCの貸与、社内ネットワークへのVPN接続、Microsoft Office Communicatorによるプレゼンス(在席)管理、Webカンファレンス(複数参加型のネット会議)、などさまざまな状況を想定した通信・連絡手段が用意されている。

 一方でITに頼らない施策も行なっており、社内に新型インフルエンザ対策本部を設置したり(今年3月)、総務からのメールで「個人としての新型インフルエンザの感染防止策」「事業継続計画の策定」「体調が思わしくない、もしくは感染が疑われたときの連絡手順」などを周知徹底している。


世界企業のパンデミック対策は?
――オグルヴィの場合

 意外と言っては失礼だが、世界的にIT企業の広報代理店を務めるオグルヴィも、IT企業並みの備えを持つ。同社は以前より、全社員にセキュアなメールアクセス手段を提供するほか、一定以上の職位にはスマートフォン「Blackberry」を配布するなど、自宅作業になっても連絡が密にとれる環境が整えられているというのだ。

 さらに、オグルヴィ・グループ全体で、大規模災害を想定したガイドライン「Business Continuity Plan(事業継続計画)」を策定。アジアでSARSが発生したときにも、今回と同様に、グローバル、およびアジア太平洋地域のHQ(指令本部)からの指示やガイドラインの履行に加えて、国内では厚生労働省が発表する状況を踏まえ、社内への情報提供を行なっている。今回の新型インフルエンザの感染予防策は、4月中に社内向けに発表・共有したとのこと。

 そのほか、各社から寄せられた回答(抜粋)は以下の通り。

大手周辺機器メーカーA社

在宅業務システムは?
[一部管理職は、社内システムへのリモートアクセスにより在宅勤務も可能]
新型インフルエンザの流行を想定したマニュアル・ガイドラインの策定は?
[現在、詳細の策定を急いでいる]
そのほかの対策は?
[発生、感染地域への出張を自粛。テレビ会議で対応を推奨]

大手周辺機器メーカーB社

不特定多数が乗り合う交通機関を使わない代替の通勤手段は?
[感染が確認されている都道府県では、時差通勤を奨励]
新型インフルエンザの流行を想定したマニュアル・ガイドラインの策定は?
[強毒性のH5N1型を想定したガイドラインを策定済。2006年以前から対策を進めてきた]

ソニー

新型インフルエンザの流行を想定したマニュアル・ガイドラインの策定は?
[鳥インフルエンザ流行を前提とした「パンデミックミックインフルエンザ行動計画」を策定済み。詳細は公開できませんが、内容は、情報収集⇒社員教育⇒対策備品の備蓄⇒パンデミック時初動対応⇒パンデミック時オペレーション計画。プランは内外の情報を収集しながら随時修正しています。]
そのほかの対策は?
[(1)対策本部を発足。(2)渡航制限はあくまで政府指針に沿い、入国者についても同様に政府が決めたとおりの規制内容に従う。(3)ウイルスのリスク情報を収集し、各政府の指針に従い、冷静な対応を行なう。]

大手周辺機器メーカーC社

在宅業務システムは?
[リモートデスクトップシステムを導入済み]
抗ウイルス用マスクもしくは通常マスクの備蓄・配布は?
[N95マスクの備蓄]
従業員への教育・啓発活動は?
[社内電子掲示板での教育・啓発、および事業所内でのポスターを掲示等]
そのほかの対策は?
[二酸化塩素溶液の散布、加湿器の強化、不要不急の出張の自粛]]

大手PC・サーバー総合メーカーD社

在宅業務システムは?
[在宅で社内システムに接続でき、かつセキュリティを保つ“リモートアクセス”を平時より準備してる。また、在宅も可能な人事施策として“フレックスワークプレース”を運用している。この制度の拡大運用で対応可能。]
新型インフルエンザの流行を想定したマニュアル・ガイドラインの策定は?
[BCP(事業継続プラン)の策定と危機管理委員会の設置があり、ガイドラインを策定している。]
従業員への教育・啓発活動は?
[社内電子掲示板での教育・啓発、および事業所内でのポスターを掲示等]
従業員への教育・啓発活動は?
[社内イントラネットでの事実に基づく啓蒙。いたずらに扇動する事は注意している。]

 アンケートをまとめてみると、必ずしも大手企業がITを駆使した在宅勤務システムを完備しているわけではなく、また「それで済む」という単純な話ではないことが分かる。

 自宅待機になっても必要最低限の連絡が取れること、社内外で感染を拡大させないこと、いたずらに不安をあおったりせず国や自治体の正確な情報を正しく伝達して、迅速な行動が取れる体制を維持すること(そのためのガイドラインは事前に策定しておくこと)。まず、これらが企業・部門におけるパンデミック対策の第一歩と言えそうだ。


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ