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事例 カーテンのくれない装飾(4)

2008年03月03日 09時00分更新

文●権 成俊/株式会社ゴンウェブコンサルティング 代表取締役、李 泰成/株式会社ゴンウェブコンサルティング SEMチームリーダー

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(続)広告文のチューニングでパフォーマンスを改善

 検索連動型広告もSEOと同様で、一度出稿すれば終わりというわけではなく、その結果に応じてチューニングを重ねていき、よりよい成果が達成できるように試行錯誤を繰り返していく必要があります。今回も前回と同様に、実際に行ったチューニングによって、どれだけの違いが生まれるかご紹介させていただきます。

事例3:“遮光カーテン”に対する広告文(その2)

 前回までのコラムで、“遮光カーテン”のキーワードで検索するユーザーのモデルは、下記のように機能性を求めるタイプと価格を最優先に考えているタイプの2種類に分かれるのではないかと、仮説を立てました。

 【ユーザーモデルの例】
 A.機能を追及し、遮光性が高ければ高いほど喜び、価格を問わない人。
 B.最低限の遮光性があれば十分。その中で最も安いものを求めている人。

 前回のコラムの事例1で、まずはBタイプのユーザーをターゲットにし、広告文を修正してみましたが、修正前に比べて費用対効果は悪化し、良好な成果を得られませんでした。そこで、今度はターゲットをAタイプのユーザーに絞って、機能性を追及した広告文に最適化し、その成果を検証してみました。

【初期広告文(汎用タイプ)】
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【旧広告文(Bタイプ・価格重視)】
1級遮光カーテン2900円から
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新広告文(Aタイプ・機能性重視)
高機能一級遮光カーテン
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 上記一覧表が、今回検証した広告文ごとの結果です。出稿期間の関係上、Aタイプのみほかの2タイプに比べインプレッション数が少なくなっていますが、クリック率やCPAといったインプレッション数に対する割合に関しては、互いに検証し合うことができます。

 まず最も重要な値であるCPA(1コンバージョンあたりの獲得単価)は、機能性を重視したAタイプが最も良好な結果になっています。1件の購買にかかった費用が1737円であり、低価格を訴求したBタイプに比べ、半分程度のコストで購買につなげることに成功しています。購買率に関しても当然Aタイプのほうが優れていて、Bタイプの購買率が約2.28%であるのに対し、Aタイプは約4.55%という高い値を示しています。

 またクリック率を見ると、こちらはBタイプ(2.25%)のほうが、Aタイプ(1.39%)よりも高い値を示しています。一見するとBタイプのほうが優れているように思えますが、検索連動型広告では1クリックごとに課金されるシステムであるため、制約・購買に結びつかないユーザーによるクリックは、できる限り抑えたほうが、費用対効果の向上につながります。そのためクリック率の値が高いほうが優れているとは言えません。むしろ購買意欲のないユーザーを省き、質の高いユーザーのみを誘導する形がベストです。その場合特定のユーザーしか広告をクリックしない状態になるため、クリック率は低くなる傾向があります。つまり、広告をクリックする段階で、ユーザーをふるいにかけていると言えます。

 今回の例で言うと、低価格を訴求したBタイプの広告文では、商品自体への興味は低いユーザーも、価格に惹かれて「とりあえずサイトを見ておくか」と広告をクリックし、その結果クリック率が高くなり、しかしながらやはり欲しい商品とは異なるため購入には至らず、購買率は低くなってしまったのだと考えられます。

 いっぽう、機能を重視したAタイプの広告文の場合、広告をクリックしたユーザーは、カーテンの機能性についても細かく要望を持っており、購買意欲の高いユーザーだったのでしょう。また機能性について訴求しているため、そこまで深く考えていないユーザーのクリックを省くことができた可能性もあります。そのため、購買意欲の高いユーザーのみサイトに誘導できたので、購買率が高くなったと考えられます。

 このことから、“遮光カーテン”のキーワードで検索するユーザーについては、価格を訴求した広告文よりも機能性を重視した広告文のほうが、パフォーマンスが高いと言えます。顧客とするターゲット層を明確に定め、それに応じた広告文を作成しレスポンスを確かめるという検証を繰り返していくことで、同じキーワードであってもその成果に大きな違いが生まれてきます。

広告文を修正することによるCPAの改善

 前回の事例とあわせて、広告文修正によるCPA改善例を3つ紹介させていただきました。広告文修正による費用対効果の改善をまとめると、下記の図のようになります。

 同一キーワードでの誘導ですので、広告の内容が変わってもほかの条件が同じならば、広告が表示される回数に違いはありません。ここでは仮に1000回ずつ表示されたとしましょう。

 ですが、広告文の内容が違うため、サイトを訪問するユーザーの数には違いが生じます。たとえば、価格を訴求した広告では、購買意欲の低いユーザーまでサイトに誘導してしまいますので、800回のクリックがあったとします。いっぽう、機能性を重視した広告では、購買意欲が固まっていないユーザーは訪問することを躊躇しますので、その分クリック数が少なくなります。ここでは、300回のクリックになったとしましょう。

 さて、結局のところ購買ユーザーの数は、両者ともに10件だったします。売上額でみれば同額であり、どちらの広告であっても違いがないように見えます。ですが、そこに至る過程で生じたコストには大きな差があり、利益の面で違いが生じてきます。

 価格を訴求した広告Bでは、800回のクリックがあったため、仮に1クリック当たり30円だとすると、2万4000円の広告費がかかっています。全部で10件の購買数だったのですから、1件あたりの購買にかかった広告費を計算すると、2万4000円を10件で割って、2400円になります。これがCPAであり、この値が小さければ、その分利益額も増えることになります。

 他方、機能性を訴求した広告Aでは、広告費の総額は9000円で、CPAは900円になります。1件当たり900円の広告費で購買に結び付くので、その分広告Bよりも利益額が高くなります。

 2つの広告文で、最終的なコンバージョン数(購買数)が異なっていたとしても、CPAは1件当たりの購買に必要な費用ですので、両者を比較できます。見かけの売上額ではなく、本質的な利益額を向上させるには、このCPAを改善していくことになりますので、検証の際の指標としてぜひお役立て下さい。

事例4:“レースカーテン”に対するランディングページの変更

 上記事例では広告文の違いが及ぼす成果への影響についてご紹介しましたが、広告文をクリックした際に表示されるランディングページを変更するだけでも、CPAの値は大きく異なってきます。ここでは、“レースカーテン”のキーワードで表示されるランディングページを例にとって解説しましょう。

  【ランディングページ】
  A.レースカーテンのカテゴリページ
   http://www.e-kurenai.com/uv-cut/index.htm
  B.レースカーテンの商品ページ
   http://www.e-kurenai.com/fs/curtain/privercy/camyu

 一口に“レースカーテン”と言っても、付加機能などによってその種類は異なります。そのためユーザーに選択肢を与えるためにも、当初はランディングページをカテゴリページ(Aタイプ)に設定していました。一定期間データを取得したのちに、ランディングページを商品ページ(Bタイプ)に変更し、どのようなユーザーに対しても共通の商品ページへ誘導しました。その結果が下記になります。なお広告文はどちらも同じものが表示されます。

 Aタイプ(カテゴリページ)に比べ、Bタイプ(商品ページ)に誘導する場合のほうが、コンバージョン数が多く、CPAの値も半分程度になっています。同種の商品が複数あったので、ユーザーごとに購入する商品が異なるでしょうから、ユーザーに選択肢を与えるためにAタイプではランディングページをカテゴリページに設定しました。ですが、それが逆にユーザーを迷わせてしまい、結局商品を買わずに、サイト外に移動してしまったユーザーがいるようです。CPAの値は悪くはありませんが、Bタイプに比べると特別よいわけではありません。

 いっぽう、商品ページをランディングページに設定したBタイプでは、すべてのユーザーに共通の商品を見せるため商品を選択する余地を狭めてしまいますが、結果ユーザーがページ遷移や商品の選択など余分な手間をかけることがなくなりましたので、ユーザーがサイト外へ脱落するケースが少なくなり、CPAが向上したのだと思われます。

 以上のように、同一キーワードであっても、広告文やランディングページを修正するだけで、最終的な成果は大きく異なってきます。また実際にはすべてのキーワードについて、1つずつ検証することは現実的ではありませんので、同系統のキーワードごとにグループやキャンペーンを整理し管理していくことになります。明確な仮説を持ってキーワードを分類し検証を繰り返すことで、惰性で広告を出稿する場合よりもはるかに優れたパフォーマンスを実現することが可能です。

著者プロフィール

名前 権 成俊(ごん なるとし、左)、李 泰成(り やすなり、右) info[アットマーク]gonweb.co.jp
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ゴンウェブコンサルティング
サイト http://www.gonweb.co.jp/

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