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商品にニュース性を持たせる術と星野仙一さんのパブリシティ術

2007年06月06日 09時00分更新

文●朝日奈 ゆか/株式会社ユンブル 代表取締役

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プレスリリースには、商品の開発ストーリーなどのドラマを書く

 みなさん、こんにちは。パブリシティの成功への道がどんどん見えてきましたね。
 このごろよく読者から、以下のような質問メールが寄せられます。
「自社製品にニュース性を持たせるのがむずかしいです。記者に興味を持ってもらえそうなニュースに仕上げる術、コツを教えてほしいのですが……」(三井純也さん・東京都千代田区・服飾関係のネットショップオーナー。ほか数名)。今回は、これにお答えしましょう。

 マスコミにニュースを売り込むにあたり、記者に注目してもらうには、「商品の開発ストーリーを用意しておく」という方法があります。
 マスコミはなんといってもドラマが好きです。優れた商品の影に感動の人間ドラマがあれば、ニュースとして、また話題としてとりあげてくれる確率はぐっと高くなります。
 われわれマスコミ側からすると、記事を書くにあたっては、その情報に魅力があふれていること、アプローチできるネタが豊富であること、それによって読者の注目をひきつけられることが第一です。

 たとえば、
「夫が急に亡くなり、3人の幼い子どもを抱えた主婦が一念発起して保育コミュニティサイトをはじめた。その会員の意見を集めて作った保育グッズが売れている」「実験段階で大失敗したことが結果的に功を奏して特許商品に成長した」などの起死回生ストーリー、「製造者の職人気質を訴えた」「全国でも珍しい海産物だということを客観的に証明した」「ここでしか買えないあの名品」などの貴重品ニュース、「こんなに掃除がラクになる」「元警察官が考案した防犯グッズをこう活用する」などの生活便利情報徹底解説などの情報記事は、雑誌や新聞、テレビで何度見ても面白いものです。

 またネット上でも「よくできているな」と思うのは、話題を欠かさないウェブサイトです。みなさんも商品やその背景について、ニュースや情報を目いっぱい公開しているサイトは興味深く読むでしょう。
 プレスリリースの作成も同じことです。あなたの商材やあなた自身の起業ストーリーにドラマがあれば、記者の注目率はグンと高くなります。

阪神タイガースと星野仙一さんはパブリシティの達人

 芸能界などは、パブリシティを成功させている人のみが生き残っている、と言っても過言ではありません。スキャンダル=ドラマ=ニュースであり、ワイドショーや雑誌に数多くとりあげてもらってなんぼ、マスコミへの露出度が命、の世界です。

 プロスポーツ界の、特に野球、サッカー、フィギュアスケートなど人気稼業の世界も同様な面が多々あります。わたしは阪神タイガースの大大大ファンですが、長年、感心し続けているのが阪神ファンのサービス精神です。選手の背番号が入ったユニホーム仕様のジャージにロゴ入りキャップを着用、首には応援タオルを巻いて肩からはロゴバックをかけ、応援メガホンを持って球場に出かける。シンボルの縦じまに虎のロゴマーク、背中にでーんと貼られた選手の名前と背番号。
 今では他球団やJリーグの応援団にも広まりましたが、昔から阪神ファンは誇らしげにこのスタイルで電車に乗り、阪神の歩く広告塔を続けてきました。彼らのおかげで、ことグッズ販売力とパブリシティ力においては、同球団は他球団を圧倒しています。ファンを巻き込むどころか、ファン主流で、球団がファンに動かされ、ファンも球団も幸福を得るという形です。
 購買してくれて、なおかつ広告もしてくれるファンという存在。商品(この場合はタイガース球団)にカリスマ性が宿ると、あとはパブリシティがひとり歩きするという例です。

←阪神タイガースの7回の攻撃時には、ファンが気合いを入れるために風船を飛ばします。この風船だけで年間百億円単位の儲けがあるといいますが、広告は出したことはないとか。ファンとマスコミによるパブリシティ効果、おそるべし。(写真は甲子園球場)

 メディアで活躍している人を見ていて、パブリシティの達人だなあ、と思う人はたくさんいますが、なかでも最近は、「マスコミの人、どんどん来て下さい。そしてめいっぱい宣伝してくださいよ。マスコミの力ほど選手に大きな影響をあたえるものはない」と公言する星野仙一さんの戦略的達人ぶりには感心させられています。
 野球日本代表監督としてメディアに登場する機会が増えているようですが、日本のプロスポーツ界の監督という立場で、あれほどアグレッシブにメディアを活用しようとした人が過去に存在するでしょうか。メディアの酸いも甘いも理解しているからこそできる戦術でしょう。
 大阪のメディアでは知られたことですが、星野さんは阪神の監督時代、スポーツ紙などの番記者(有名人や政治家など、特定の人や団体につく専属記者のこと)にがんがん、贈り物を送っていました。阪神が負けてボロボロに書かれた日には怒りをぶちまけながらも、それも計算づくかのようにマスコミを利用し、また配慮を忘れることなくふるまうわけです。
 マスコミも人の子、前向きで積極的な思考力を持ち、筋が通った行動をする人には当然、エールを送りたくなります。よって、星野さんの露出度はいい形でますます増えて行きます。

 このように考えると、世間のある側面はパブリシティで動いていると見ることが出来ます。政治、経済、芸術、学術、芸能、スポーツ……どの世界も、PR戦術がモノをいっています。 
 これからは新聞と雑誌の記事やテレビ番組の全体を、「パブリシティが上手な企業は? 人物は? 彼らの作戦は?」という視点で見てください。商品にまつわるドラマの演出方法、ニュース性を生み出すコツが見えてくるはずです。

 次回からは、取材を申し込まれた場合の対応法についてお話します。正念場です!

著者プロフィール

名前 朝日奈 ゆか info_email_01[アットマーク]yumble.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ユンブル
サイト http://www.yumble.com/

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