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デジタルコミュニケーション術最前線レポート(2)――内田洋行が提案するユビキタス広場

2008年08月22日 09時00分更新

文●朝日奈 ゆか/株式会社ユンブル 代表取締役

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黒板も教科書も教材もCDもアンモナイトの解説も いっせいにデジタル化する教育の現場

 前回につづき、内田洋行のショールームで見たユビキタスの世界をご紹介します。
 まず案内されたのはマルチスクリーンで授業ができるIT教材の教室。国語の教科書がスクリーンに大きく映し出され、物語『ごんぎつね』をきれいな女性の音声が音読していきます。先生が音読するのではなく、デジタル音声が読み上げてくれるのです。漢字の書き順もPCソフトがスクリーン上で教えてくれるので、間違うことはありません。スクリーンがあるから、教科書ももう不要!

 日本の小中高校には、パソコンやネット接続環境がほぼ100%行き届いていることを利用し、内田洋行の場合はe-黒板というハードの販売のほか、教育用のコンテンツのソフト配信に力を入れています。ネット環境さえあれば、定期的に教材が送られてくる……。
 このシステムは全国の学校ですでに多数取り入れられています(内田洋行だけでe-黒板は小学校に2000台余を納入しているとか)。お父さん、お母さんたちが見るとびっくりするだろうなあと思いつつ、「授業のデジタル化」の現実をリアルに知ることができました。

 次に現れたのは、CDをデジタルボードに置くだけで音楽とそのCDの情報がディスプレイで現れる「タンジブルテーブル」。モーツアルトのCDをボードに置くと、モーツアルトの顔写真と曲目のほか、実績年表とか他の演目やエピソードなど、多種多彩な情報が映像で表れる仕組みです。

 ここでもデジタルは、音声、照明が相互に効果的に情報空間を演出し、「音楽を聴く」スタイルの広がりと多様性を明示しています。なんといってもデザイン性の魅力がバツグン。
 その隣には、ボード上にアンモナイトの化石を置くと化石の知識教養解説がずらーっと表示されるラックが。理科の先生なら泣いて喜びそうな情報台で、すべて手にとって情報を確認したくなります。

●タンジブルテーブル
アンモナイトやCDをテーブル上に置くとモニタに映像や文字の情報も現れる。CDを手で回すと曲が変わり、アンモナイトの化石を回すと画像が回るなどの動きもある。

 一見して、先生側の視点で見ると、「知識をことば、音声、音楽、映像と多元的に伝えることができる」とか「子どもの知性に訴える方法の選択肢が増える」とか「間違うことなく伝えることができる」とか「生徒の興味をひくことができる」とか「情報のデータベースができる」とかいろいろとメリットがありそうなのがすぐにわかります。
 まあ、反面、「こういう教材がそろうと先生はラクでいいなあ」とか「ここまでデジタルで教えられたら頭が悪くなりそー」とも思いますが、これからはもう、この波がどんどん広がっていくのでしょう。
 ちょうど我々と同時に、東京都内の某学校の先生たちが10人以上も見学に訪れていました。

デジタルのワインセラーがソムリエの役割も……

 さらに進むと、今度は大きなワインセラーの登場です。ワインセラーと情報ボックスがセットになった、その名も「コンテンツマイスター」。ワインに情報満載のICタグを貼り付けてあるので、お客さんがワインボトルをICタグボードの上に載せると、液晶モニタにそのワインの味、酸味、産地、値段、その他のいろいろな情報が現れるシステムです。いわば、「ソムリエの役割を果たすセラー」。このセラーは店側からすると、どのワインがいちばん多く情報検索されたのかがわかるため、一発で売れ線を知ることができます。ワインショップやレストランにあると便利だろーなー、見た目もおっしゃれ~っというぴかぴかのセラーです。

●検索確認画面
店側は、そのワインがお客さんに何度閲覧検索されたのか、検索ランキングを確認できる。


●コンテンツマイスター
ワインボトルをセンサー台に置くと、液晶モニタにそのワインに関する情報が現れる。

 その隣には、これまたとびきり洗練されたレジが出現。これが、内田洋行が東芝テックと共同開発したという「スタイリッシュポス」です。写真のように、低いカウンターのトップ画面に明細が表示されるのが印象的。これもICタグに対応しているため、トップ面に情報キューブや商品を置くと同時に、液晶モニタに買い物内容、金額など、商品情報が置いた順に表示されていきます。キャッシュレス、商品の在庫管理などもお手のもの。
 前面が広告パネルになっているので、「もうひとつ買い」の促進にもなるとか。「便利+オシャレ+ちゃっかり」なポスです。
 レジといえば、店員はお客さんの顔を見ることなくさっさと金額をレジに打って精算するだけの接触が当たり前ですが、このポスならば対面で会話を交わしながら買い物をフィニッシュできるわけです。情報の蓄積と公開のほか、店と客のコミュニケーションを活発にすることは間違いありません。


●スタイリッシュポス
(左)商品ICタグを読み取り、テーブルトップの液晶モニタに商品情報を流す。操作は画面をタッチするだけで機械を触っている、という感触はない。(右)全容はこんな風。レジのイメージを一新した。

 次回に続きます。

著者プロフィール

名前 朝日奈 ゆか info_email_01[アットマーク]yumble.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ユンブル
サイト http://www.yumble.com/

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