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株式会社ナチュラム 代表取締役 中島成浩氏 (後編)

2007年11月30日 09時00分更新

文●とこ みゆき/サポタント株式会社

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社員の評価基準はマネジメント能力

 それでは社員の皆さんが、Eコマース事業を拡大させ、売上・利益を伸ばすようにしていくために、どのように教育・評価されていますか?

中島氏(以下敬称略) 利益については会社として絶対的な共通言語なので各自の目標達成を意識してもらうように会社の経営数字を社内で公開する体制にしています。月次決算も出していますし。このことに追加して、ナチュラムではマネジメント能力を高めてもらうところに重点を置いています。実際に、マネジメント能力を重要視した評価システムも昨年導入したばかりなのです。

 マネジメント能力に対する項目が多いということですか?

中島 そうです。たとえば、項目の一つに【リーダーシップ】というものがあります。【リーダーシップ=部下を鼓舞してやり遂げる力】がその人にどのくらいあるのかを判断・評価し、責任者が項目ごとに点数をつけていきます。こうしたマネジメントに関する項目が全体的に多くあり、トータルは100点満点で評価します。

 こうした評価システムに関しては、いつ頃からあったのですか?

中島 上場を目指す計画でしたから、初期の段階から細分化された評価システムはありました。ただし以前はOJTを通じての作業に対する評価も大きい比率を占めていました。そうした評価基準を進めるうちに結局、社員に一番必要なのは「マネジメント能力」だという判断になったので昨年、変更したのです。

 このマネジメント能力がメインとなった評価システムは、もちろん給与にも連動しているのでしょうか?

中島 もちろんです。マネジメント力の評価点数でまず階級が変わります。(<例>S1,S2のようなもの。専門職、総合職などの分類はナチュラムではありません。)階級によって役職が変わりますので、もちろん給与も連動して変わってきます。

 それでは、たとえばマネジメント能力が弱いが、きちんと与えられた仕事をこなす人については、去年と比較すると評価が下がるので、給与が下がってしまうという可能性もあるのでしょうか?

中島 厳密に言うとそうなのですが、そんなに急激に変更にはしていません。給与への連動はもう少しゆるやかに考えています。まずは、マネジメント能力の視点からいくと、現在の給与は高いのか安いのかを本人に説明します。今の評価基準でいくと現在の給与額が評価よりも高い人の場合このままの評価が続くと、将来的に給与が下がるので、しっかりとマネジメント能力を高めるように説明し、指導している状況です。この評価は部長列以下、つまり役員以外の社員全員に適用されています。

 マネジメント能力についてはマスターした役員は免除ということですね。

中島 こうした評価は確かに役員に対してはしないのですが、その代わりに信任投票制は導入しています。

 どういうことですか?

中島 年に2回、役員会で信任投票をするのです。役員の仕事ぶりに疑問や不満があるときには「不信任」票を投じ、問題を提起できるようにしています。自分で自分の死刑台をつくるようなものなので、さすがに私が言い出したときは、役員から反対されましたが、ある意味、役員も緊張感をもって業務をすべきだろうと思い、導入しました。

 中島さんが思う、役員の役割とはどんなものだとお考えでしょうか。

中島 会社の方向性を決め、現場レベルとの意識を整えることだと思います。役員が売上や利益目標、予算などを決定して、現場に伝え、現場の社員と何度も議論を重ねながら実行計画にまで落とし込ませるようにします。このプロセスに約3カ月間もかかるんですよ。現場もまきこんで、計画をミッチリ練っていますから、きちんと各人も意識してくれています。

 それでは少し話題を変えまして、、よく、経営者の皆さんから「社員に企画力がない」とか「社員のモチベーションをうまくキープできていない」というような悩みを耳にしますが、ナチュラムさんではどうでしょうか。

中島 うちは鼻息が荒い社員が多いですからね(笑)先ほど説明したマネジメント能力を評価基準の核にしたことでやる気ある社員のモチベーションがあがりやすい体制になっていると思います。マネジメント能力の向上というのは、社会的な影響力が向上するということです。すると「あ、こんなことが出来るようになってる!」と自分の成長を実感し、成長することが面白くなって、「もっと成長したい!」と思うようになるようです。こうなってくると成長することがモチベーションアップにつながります。

 モチベーションを上げるということをテーマにするのではなくて自己成長のおもしろさをどんどん追及してもらってその結果、モチベーションアップにもなる、ということですね。企画力などについてはいかがですか?

中島 やる気のある人間が、力を発揮できる環境を用意していれば、「あれをやらせろ!これをやらせろ!」と企画を立上げ、勝手にのし上がってくるものですよ。周りでもそうでしょう。出来る人は、実力を発揮できる環境さえあれば、勝手になんでもやるんです。そうした人は、人の仕事を奪うし、やるな!と言ってもやりますし(笑)

 じゃあ、出来る人が企画などをどんどん立上げ、活躍できる体制が出来ているということですね。

中島 まあ、そうですね。ただ、イケイケドンドン人間は、いろんなことを立ち上げて、どんどん広げていく傾向もあるため、同時にまとめあげていく仕組みは必要です。

 それではフロントではなく、管理部門のような間接スタッフについてはどのように評価されていますか?

中島 管理部門でも、業務をうまく効率化することによって本来、人員3名必要なところを1名でまわせる体制をつくったら、コスト削減が出来、利益増加へ貢献できます。こうした視点で評価をできます。

 なるほど、そうですね。ただ、マネジメント能力+結果、という評価が中心となると、社内がかなり殺伐とした空気になりそうですが…

中島 もちろん、プロセスについても評価します。ただし、プロセスを検証したときに、やれることがあったのにきちんとやっていないでは、評価はどうしても下がってしまいます。反対に、やるべきことをきちんとやったのに、それでも計画割れしてしまう場合には、元来、経営陣からの割当ても含め、最初の計画が間違っていたと考えています。

 それでは、最後の質問です。中島さんはナチュラムをどんな会社にしていきたいですか?

中島 世界的な視野をもちながら、さらにEコマース事業に特化した会社にしていきたいです。Eコマースといえば、ナチュラム!というように。

 いかがでしたでしょうか?
それでは、ナチュラムさんのチームワーク&人材育成のポイントです。

(1)外部に委託できることはどんどん委託し、
 会社のメイン事業に社員が集中できるようにしている。

(2)社員の評価基準の重要な要素はマネジメント能力。
 評価システムもマネジメント能力を中心につくられている

(3)やる気ある人のモチベーションがあがりやすい環境を整えている。

【余談】
 実は、ナチュラムは私がはじめて知ったネットショップさんでもあります。
2000年4月、大阪市が開催した創業支援事業のお披露目イベントでのゲストスピーカーがナチュラムの中島さんで、私は1参加者としてお話を聞かせていただいたのです。
 それまでネットショップ業界のことなど全く知らなかった私でしたが、ネットでアウトドアとフィッシングの商品がそんなに売れるもんなのだととても驚いた記憶があります(懐かしい)。
 その私が、今やネットショップ運営のセミナーを開催したり、ウェブ業界専門の人材派遣をしているのですからなんとも縁というのは面白いものです。

著者プロフィール

名前 とこ みゆき happy[アットマーク]supotant.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 サポタント株式会社
サイト http://www.supotant.com/

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