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商品を紹介するキャッチコピーのつくり方(7)――編集の方程式3・リズミカルに!

2008年05月15日 09時00分更新

文●朝日奈 ゆか/株式会社ユンブル 代表取締役

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文章には音程が隠されている

 キャッチコピーには、情報を具体的に盛り込むこと。前回は、そのことを説明しました。情緒的、感情的な表現でスタイルを追求しても、商品を探している消費者の心には届きません。商品の特徴がひと目でわかるコピーづくりを心がけるべきです。

 それをキモに命じた上で、消費者にインパクトがあるキャッチコピーをつくるにはどうすればいいのか。いくつかのポイントをあげましょう。

 なんといっても重要なのは、リズム感です。
 歌を例にとりましょう。共感する歌詞が覚えやすく美しいメロディにのってリズミカルに聞こえてきた歌は、すぐに口ずさむことができますね。それは演歌でもロックでもオペラでも、ジャンルを問わず同じ方程式にのっとっています。
 リズムといえば歌や踊りの専売特許ではありません。ことばも同じ。人は本を読むとき、文字を目で追っているように思いますが、実際には五感でことばを読んでいます

 優れた作家の文章には、その作家独特の文体があります。何作も読んでいると作家の口調、言い回しがわかってきますが、行間には実は音程が隠されています。どんな長編でも飽きることのない文章は、その作家特有の美しい旋律にのって我々の心に届いているのです。我々は黙読に没頭しながら、知らず知らずのうちにことばのリズムを感じとっています。

 世の中の流行語にも、リズムがつきものです。特にウケるお笑い芸にはリズムがあります。「そんなの関係ねえ」も「グ~」も、短いフレーズ、瞬間のノリのリズムで笑いという共感を得ています。
 わたしは大阪生まれの大阪育ちですが、小学生のとき、先生がいじめっ子の男の子に「人を泣かすより笑わせろ!男やったら笑かさんかい!おまえが歌え!パンツ一丁になって踊るんや!」と必死で叱っていたことを今も時々思い出します。説得力があるようなないような、先生の説教。
 家では親が「人を笑わすっちゅうことはいちばん難しいねんぞ。歌え、踊れ!」としょっちゅう言うので、「笑いをとる=パンツ一丁で歌って踊ること」という方程式があるかのように思っていました。小島よしおを初めて見たときには「もろに証明されたなー」と思ったものです。
 ことばが身ぶり手ぶりのリズムにのって、人の口にのぼりやすくなったわかりやすい例です。

「情報がつまっている」か「ユーモアがある」か

 ビジネスシーンでも、スピーチが面白い人は注目され、魅力的にうつります。話しことばにリズムがあります。ユーモラスな表現をする人の口調はリズム感のインパクトが強いのです。

 笑いがあると、人は喜んでくれますね。
 文章も同様です。が、歌なし、踊りなし、パンツ一丁なしの文字だけで勝負をするので、笑いをとること、読者がクスッと笑ってくれるユーモラスな文章を書くということは、人間のあらゆる表現方法のなかでももっとも難しいことでしょう。笑いがおこるキャッチコピーや文章に出合ったときには、敬意を表したくなります。

 注目される、覚えてもらいやすいキャッチコピーとは「情報がつまっている」か「ユーモアがある」かのどちらかです。両方あると最強です。キャッチコピーだけでなく、ボディコピーや本文・キャプションでも同じです。

 よって、キャッチコピーや文章をつくる際には、リズムを意識するのが鉄則です。15字~30字程度の長さで、2~3フレーズほどに区切って一気に読める形でリズムをとります。
 「五・七・五のリズム」を思い出してください。日本に昔から伝わるこのリズム。いきなり五七五にこだわると標語のようになったり、ダサくなるので要注意ですが、リズムのいいキャッチコピーをつくることの意味は、五七五調のなんたるかを思い出せば実行に移しやすいでしょう。

 キャッチコピーをつくったら声に出して何度も読みあげましょう。3人ほどに音読してもらって、リズミカルに仕上がっているかを推こうします。

 複数の候補から選ぶ際のポイント
1.情報がつまっているか(ユーモアがあるか)。
2.リズムがあって口ずさみやすいか。

 次回につづきます。

著者プロフィール

名前 朝日奈 ゆか info_email_01[アットマーク]yumble.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ユンブル
サイト http://www.yumble.com/

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