肉体的にも金銭的にも
続けられる限りは現役で!
―― ゲームそのものは会社を経営する以前から作られていたんでしょうか?
Hal はい。PC-8801時代には趣味でプログラミングをしていて、プレイヤーが選挙に立候補して当選するというシミュレーションゲームや、テキストアドベンチャーゲームを作ったりしていました。雑誌「ログイン」にもずいぶん紹介していただきました。
1990年代、パソコン通信で知り合った仲間たちと同人サークルを作りました。メンバーには年配と言うことで驚かれましたが。その内「自分も好きなことを仕事にしたい」という気持ちで商業ソフトに移行したんです。当時も同人界からプロになる人はいたんですよ。
ですが、個人で作っていた吸血鬼モノのテキストアドベンチャーゲームの続編を作ったところ、惨澹たる売れ行きだったんです。好きなことをやってお金がもらえればいいという気持ちでは厳しいのだと、心機一転、ニーズに合わせたものを作るようになりましたね。
―― そこから今までやってこられたわけですよね。さすがにもう引退して、次の世代に任せようかと思うとことはありますか?
Hal それはありますね。目の疲れとか集中できる時間も明らかに短くなっていますし、体力の衰えはどうしようもありません。そう遠くない将来、肉体的に製作についていくことはできなくなるだろうという不安はあります。
それにゲーム自体が昔は(売れ行きの面で)「バクチみたいなもの」と言ってましたが、今は「バクチそのもの」になってしまったので、金銭的にも続かなくなる可能性はあります。
でも、続けられる限りは現役でやっていきます! この歳で再就職はできないでしょ?(笑)
―― 確かに(笑)。その熱い意気込みでLostScriptブランドを立ち上げたんですか?
Hal ブランドを立ち上げたきっかけは、ゲーム「黒の断章」のシナリオを書いていたライターの大槻涼樹さんが入社してきたことでした。大槻さんと「昔のゲームブックをデジタルにしようよ」という話があったところからスタートしたんです。
―― 先ほど趣味に走った内容では売れないという話がありました。それはかなり冒険だったのでは?
Hal そうですね。ただ、その内容が面白かったので、とにかくこれはやってみなければという気持ちがありました。自分のやりたかったことと会社のやりたいことがようやく一致したという感じです。
おかげさまでデビュー作の「蠅声の王」は時間こそかかりましたが、再版もかかっています。6月発売の続編「蠅声の王 シナリオⅡ」も、自分で言うのもなんですけどはっきりいって面白いです……自分で面白いからといって売れるとは限らないんですが(笑)。
―― 前作「蠅声の王」を遊ばせていただきましたが、お世辞抜きで面白かったです。ただ、ゲームブックという発想自体がかなりマニアックですよね。
Hal ゲームブックというだけで「古いんじゃないか」とか「昔のものを引っ張ってきただけ」と思われてしまうと残念ですね。遊び方としてもサイコロを振らなくても選択肢を選んでいければ、普通のアドベンチャーゲームと同じなんです。
凝りたい人はステータスシートに書き込み、サイコロの目の通りに進んでいく。それが面倒であれば、サイコロを振って自分の進みたい選択肢を選ぶだけでもいい。もっと簡単なのがよければ、サイコロを振らなくてもいい。イージーな遊び方からマニアックなものまで、遊び方を自分で選べるわけです。
―― 最新作を楽しみにしています。それでは最後にメッセージをお願いします。
Hal 自分と同年代の方々にも、もっとゲームをプレイしてほしいですね。盆栽も良いけどゲームをやろうよ、と(笑)。
というわけで、非常に楽しい語らいをさせていただくことになりました。萌えはおろかファミコンすらも縁がない自分の父親より、さらに年上の方と「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」や「ひぐらしのなく頃に」の話で意気投合するのは不思議な感覚でした。
ブログから伝わってくるキャラクター通りの非常にユニークな方で、「スナッチャー」など好きなゲームの話をする時の目の輝きようはもう少年そのもの。美少女ゲームにも偏見を持たずに遊んでいるシニアの姿はかっこいい!
自分も一生涯オタク人生を目指して見習いたいと思いました。そんな社長が作る最新作、もうすぐ発売ということで要チェックですね。
筆者経歴――かーず
アニメやゲームなどの萌え系とフラッシュ作品の紹介に強い、老舗ニュースサイト「かーずSP」管理人。管理人、製麺業、ライターの3足のわらじを履くことでも知られている。
代表作は「かーずSP選FLASH大全」、共著に「いちゃラブ大全」(いずれもインフォレスト)など。
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