【比較5】発色傾向
紫、薄紫、白、黄色などの色の花を配置して発色傾向を比較してみようと思った。しかし、キヤノンとシグマのレンズはほとんど違いが分からないくらい似ている。AWBで撮影しているので、カメラ側の画像処理があるていど介入している可能性もあるが、発色に関していずれのレンズも偏りはないと思われる。
●ワイド端
【比較6】手ブレ機能
カメラボディは有効画素数1280万画素のキヤノン「EOS 5D」を使用している。実験の条件は下記の通りだ。
撮影条件
・ボディの設定は、AFはオン。測距点は中央1点。シングルAF。
・レンズの焦点距離は400mm(テレ端)に固定する。手ブレ補正機能はオン。モード1を選択。
・1/500、1/250秒、1/125秒、1/60秒という4種類のシャッター速度で100枚づつ試写する。
・露出ブラケットを使用して3連写に限定して、繰り返し撮影する。
・判定用の被写体は樹木の幹。筆者の目線とほぼ同じ高さの模様を撮影。これによりレンズは大地とほぼ平行になっている。
・判定はファインモード(1280万画素相当)で撮影された写真を拡大率100%で行なう。
・明らかな手ブレによる像の流れがある写真を手ブレ写真としてカウントする。
撮影結果は1/250秒以上で撮影するならシグマは効果的、1/125秒以下ではキヤノンが健闘を見せた。下記の表がその結果である。
1/500秒 | 1/250秒 | 1/125秒 | 1/60秒 | |
---|---|---|---|---|
キヤノン | 3枚 | 24枚 | 75枚 | 99枚 |
シグマ | なし | 12枚 | 95枚 | 100枚 |
手ブレ補正機能はシグマに軍配
比較結果の勝利者は明らかにシグマレンズだった。手ブレ補正効果の公称値がキヤノンの約2倍である4EVというのは伊達ではないようだ。しかし、一方で、1/125秒ではキヤノンの方が良い結果を出している点が気になる。ただ、これは筆者1人しか参加していないテストなので、これが2本のレンズの実力というわけではなく、せいぜい参考資料程度に受け止めて欲しい。
シグマは手ブレ補正の効果の有無がハッキリと分かれていた。3枚の連写単位ですべてブレているなど、失敗写真は固まって発見される傾向がある。ある特定状況がブレを誘発すると思われるので、そのブレの原因を突き止めることができればさらなるブレの軽減が期待できる。
キヤノンはシグマよりも手ブレ補正の立ち上がり速いので、実際の撮影フィールドではシグマとの差が縮まるものと思われる。また、1/125秒のあたりで何とか踏ん張るあたりがプロ仕様の高級「Lレンズの」プライドというところだろうか。
筆者的にはシグマを推す!
後編の撮影サンプルを眺めている間に、キヤノンEF100-400mm F4.5-5.6L IS USMとシグマAPO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSMに対する印象がまた変わった。前編が終わった直後はシグマの圧勝の様な気がしていた。しかし、野鳥という特殊な撮影条件というくびきを解き放つと、キヤノンは本来の基礎体力の高さをアピールしてくれた。
結論だが、野鳥撮影という限定的な目的でレンズを購入するなら、今でも100%シグマの方がオススメだ。しかし、日常的な広範囲の撮影に使うというなら、何を撮らせてもそつなくこなすキヤノンの方も捨てがたい。もちろん、シグマも野鳥撮影なら完璧というわけではない。作動ノイズが大きいので、野鳥撮影などの静かな現場ではちょっと気になる。撮影現場で1人でもAPO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSMユーザーがいれば作動音で分かる。実際、同じレンズのユーザーさんと目があってしまって「ニヤリ」と視線で挨拶することも珍しくない。
おそらく、ネックは値段だろう。シグマがキヤノンの半分程度の出費で新品を購入できるという事実は、レンズの多少の粗は無視するに足りる「スペック」に違いない。個人的にはやはりコスト・パフォーマンスを考慮してシグマに軍配を上げたいと思う。