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すっきりわかった!仮想化技術 第2回

サーバ仮想化の仕組みと種類を学ぶ

ホストOS型とハイパーバイザ型の違いを知る

2009年05月08日 06時00分更新

文● 大内明/日本仮想化技術株式会社 

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ハードウェア構成のポイント

 仮想マシンによるサーバ仮想化では、ハードウェア構成が重要なポイントとなる。特に、CPU、メモリ、ストレージなどは、あらかじめ余裕を持たせた構成で行なうのが大切である。なぜ利用効率を上げる仮想化で、リソースに余裕を持たせる必要があるのだろうか。

 1つは、仮想マシンの突発的なリソース利用率増加などに備えるためである。すべての仮想マシンで同時に負荷が上がった場合に仮想ホストサーバへの負荷が累積的に大きくなってしまい、システムがダウンする可能性があるからだ。

 もう1つは、仮想ホストサーバを複数台導入して運用する場合には、どれか1台の仮想ホストサーバが故障したりメンテナンスを行なうときに、そのサーバ上で稼働していた仮想マシンを受け入れる予備リソースとして利用できるためである(図7)。もちろん、将来仮想マシンを増やす予定がある場合の予備スペースにもなる。このような理由から、必要な仮想マシン以上のリソースをあらかじめ用意しておく必要があるのだ。

図7 ハードウェア構成―メンテナンス時のイメージ

 たとえば、CPUであればマルチコアCPUが1個から複数個、メモリは仮想マシンの数に応じて多めに、ストレージはディスクI/Oを分散させるためにハードディスクの台数を多めに用意するのが一般的な構成となっている。また、ライブマイグレーションを実現するためには共有ストレージが必要だが、これにはFC SANやNFS、iSCSIなどの共有ストレージが利用されている。

 また、余裕を持たせるだけではなく、仮想化するサーバの用途や負荷状況に応じたハードウェア構成を考えることも重要だ。たとえば、データベースサーバを仮想化するのであれば、高性能なストレージ機器が必要だろう。また、多量の演算処理を行なう仮想サーバであれば、高性能な多コアのCPUを用意すべきだろう。このあたりの考え方は、サーバの仮想化を行なうからといって特別なところがあるわけではない。

CPUの仮想化支援技術

 仮想マシンによる仮想化は、基本的にはソフトウェアが処理を行なうが、ソフトウェアだけですべてを実装するには複雑な処理を必要とするなど、困難な面があった。そこで、CPUベンダーであるインテルとAMDの2社がそれぞれのCPUに仮想化支援機能を実装し、ソフトウェアでの処理の大部分をハードウェアで肩代わりできるようにした。現在このようなものとして、インテルが「Intel VT(Intel Virtualization Technology)」を、AMDが「AMD-V(AMD Virtualization)」を提供している。Xenではこれらの仮想化支援技術を利用して、仮想マシンの完全エミュレーションモードを実装している。また、仮想化技術支援機能によって、オーバーヘッドが若干低減された。

 また、あるCPUアーキテクチャで動作していた環境を別のCPUアーキテクチャの環境に移行する際、ソースやバイナリに変更を加えずに移行を可能とする、「バイナリトランスレーション技術」もある。バイナリ実行時にCPUの命令を随時変換していくことで、異なるCPUアーキテクチャでの動作を実現可能としている。いわば同時通訳のような役割だ(図8)。

図8 バイナリトランスレーションのイメージ

 具体的な製品では、トランジティブ(Transitive)のQuickTransitでは、Solaris/SPARCで使用してきたバイナリをSolaris/x86でそのまま動作させることが可能になる。また、同社が開発したRosettaは、PowerPCのMacintoshで動作していたアプリケーションをIntel Mac上で動作させることが可能になる。

今後のサーバ仮想化

 近年「グリーンIT」という言葉があちらこちらから飛び出しているように、地球環境に配慮したIT環境が求められている。特に、電力消費量の抑制は重大な課題だ。そこで、物理サーバの稼働台数削減が見込めて、サーバ1台あたりの利用効率を高められるサーバ仮想化技術が注目を集めており、企業のサーバなどでは、今後仮想化の導入が加速していくものと予想される。また、ソフトウェア面でも省電力サポートは進んでおり、Xen 3.3にはCPUの省電力機能を利用した省電力機能が実装されている。

 仮想マシンによる仮想化技術は、実用に耐えうるものとしてすでにたくさんの企業で導入が進んでいるようだ。今後もパフォーマンスや安定性の改善など、仮想化技術はますます発展していくであろう。

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