思ったより省電力ではないHD 4770
ATI PowerPlayの恩恵は、やや薄め
40nm世代ということで、注目されるHD 4770の消費電力だが、どのくらい低くなっているのだろうか。
消費電力は、OS起動後10分放置した状態を「アイドル時」、3DMark VantageおよびFar Cry 2を実行したとき、そしてBlu-rayディスクを再生し、それぞれの消費電力をワットチェッカーを使用し計測した。
3DMark VantageおよびFar Cry 2実行時は、確実にHD 4830およびHD 4850を下回り、40nm世代のメリットを感じるものの、アイドル時およびBlu-rayディスク再生時はHD 4830よりも僅かに高く、目に見えて“省電力”とは呼べない状況だ。特にアイドル時は、ATI PowerPlayにより、160MHzまで落ちるHD 4830に対し、HD 4770は250MHzまでにしか落ちていない。160MHzまで落とせないのは、そこまでクロックを落とすと不安定になる可能性、もしくは160MHzまで落としても消費電力が下がらない、あるいはその両方が考えられる。
省電力に期待していた筆者としては、この部分は残念でならない。

【グラフ12】消費電力(単位:W)←better
念のため、GPU温度も測定してみた。測定にはHWMonitorを使用している。室温は24℃で、PCケースに入れないバラックの状態としている。
GPUクーラーがそれぞれ異なるほか、ファンコントロールも異なるため、一概には比べられないが、HD 4770リファレンス仕様のGPUクーラーは、高負荷時に比較的温度が低くなっている。もっともHD 4770リファレンス仕様のGPUクーラーは2段階、静音モードと爆音モードで、熱くなったら一気に爆音モードで冷却し、温度が下がるとすぐに静音モードに移行する、というのを繰り返す。その分岐点が70℃前後にあるようだ。

【グラフ13】GPU温度(単位:℃)←better
HD 4830、HD 4850を置き換える存在だが
バリエーションモデルに期待したい
総合的に見て、HD 4770は、HD 4830を確実に凌駕している。そしてHD 4850とは互角か、あるいはやや落ちる程度で、価格差があるなら高負荷時に省電力なHD 4770を選ぶメリットもある。しかし逆を言えば、HD 4830以上、HD 4850未満という微妙な位置づけであり、期待された消費電力も思ったより低くなく、それでいてPCI Express補助電源コネクタも必要という、なんとも煮え切らない仕様だ。
とくにHD 4800シリーズの性能で、PCI Express補助電源コネクタのないモデルを期待している人にとって、HD 4770は期待の星だったと思われるだけに残念だ。
しかし、PCI Express補助電源コネクタのないモデルや、OCによってHD 4850を大きく上回るモデル、あるいは省電力に徹底したモデルなどバリエーションを広げることで、幅広いユーザーに受け入れられる製品になる素質は十分にある。
ということで、各ビデオカードベンダーにはそういった点に注力した製品の発売を望む次第である。

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