このページの本文へ

すっきりわかった!仮想化技術 第1回

サーバも、ネットも、ハードディスクも

さまざまな仮想化技術の基本を理解する

2009年05月01日 15時30分更新

文● 大内 明、塩田紳二、阿部恵史

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ネットワークの仮想化

 大企業などでは、拡張の繰り返しなどによって社内ネットワークの接続設定が複雑化し、その管理が深刻な問題となっている。ネットワークトラブルが発生しても、原因の切り分けが難しくなってしまい、メンテナンスコストがかかってしまう。そのようなときに、ネットワークを仮想化によってすっきりと整理して、見通しのよいネットワークを構成することによって問題を解決することができる(図3)。また、拠点間同士のネットワーク接続も、専用回線を用いた方法から、ネットワークを仮想化して一般回線で通信を行なう方法に注目が集まっている。

図3 ネットワークを仮想化ですっきり整理

 その代表的なものとして、VLAN(Virtual LAN)VPN(Virtual Private Network)VRF(Virtual Routing and Forwarding)といったものがある。特に、VRFはルータに含まれる技術で、複数のルーティングテーブルを同時に動作させることができるものとして興味深い。ルータの中に仮想ルータが複数入っていると考えてよいだろう。ISPでは顧客向けにVPNを提供するためにVRFを使用していることから、「VPN Routing and Forwarding」とも呼ばれている。

コンピュータの仮想化

 そして現在もっとも注目されている仮想化は「コンピュータの仮想化」だろう。「マシンの台数を増やさずに複数のOSを動かせる」「利用率の少ないサーバ群をOSごとまとめて1台のサーバに収めてしまう」など、魅力の多い技術だ。以下、コンピュータにおける基本的な仮想化技術を紹介する。

一番身近な仮想メモリ

 普段、コンピュータを使用していて一番身近にある仮想化技術と呼べるのが、仮想メモリである。コンピュータの操作中、実メモリサイズ以上のメモリ領域が必要になった場合に、メモリ上の一部のデータをハードディスクなどの別のデバイス(スワップ領域)に退避させ、使用できるメモリ容量を増やす仕組みを「仮想メモリ」という。

 仮想メモリは、最新のOSはもちろん、古くはMS-DOSの拡張機能としても実装されていた。

仮想マシン

 個人で気軽に仮想マシンを起動して楽しみたい場合や、開発のデバッグ用などに仮想マシンを利用したいときには、VMware PlayerやQEMU、VirtualBoxといった仮想マシンソフトウェアが利用できる。これらは無償で公開されているので、気軽に導入して試せる。VirtualBoxは、サン・マイクロシステムズがイノテック(InnoTek)を買収し、オープンソースかつ無償で公開したプロダクトだ。

サーバ仮想化

 利用率が低くサーバ性能を活かしきれていないサーバを1台の物理サーバに集約したり、Windows NTなどの古いシステムを延命させる手段として「サーバ仮想化」が注目を集めている。サーバ仮想化の導入によって物理的なサーバ台数が減少することで、電気代やハードウェアの保守費用、ラックスペースの削減などが期待されている。

 おもなサーバ仮想化ソフトウェアには、ヴイエムウェアのVMware ESX Server、オープンソースで開発が行なわれているXen、マイクロソフトがリリースして注目を集めているHyper-Vなどがある。また、VMware ESX Serverの機能限定版となるVMware ESXiが、無償で公開されている。

 サーバ仮想化も技術的には仮想マシンを応用したものである。しかし、特定用途に特化した利用方法であるため、ここでは仮想マシンとは別に取り出して扱っている。

アプリケーション仮想化

 アプリケーション仮想化は、サーバにアプリケーションをインストールして、クライアントに配信する仮想化技術である。たとえば、企業のデスクトップPCにそれぞれインストールされているオフィスソフトを仮想化した場合、バージョンアップやセキュリティ対策はサーバで集中的に行なえるので、コストを大幅に抑えることができる。また、アプリケーションはサーバに1回インストールするだけで済むため、クライアントへの導入の手間も省ける。

 代表的なアプリケーション仮想化ソフトウェアに、シトリックス・システムズの「XenApp(旧Citrix Presentation Server/MetaFrame)」や、ヴイエムウェアの「ThinApp」などがある。

クライアント仮想化

 クライアント仮想化とは、OSを含めたデスクトップ環境をサーバ上の仮想マシンで稼働させる技術である。ユーザーは、端末からリモート接続して使用する(図4)

図4 クライアント仮想化。シンクライアント端末と組み合わされることも多い

 クライアント仮想化のメリットは、各ユーザーが共通で使用するOS部分とユーザーの個別設定情報を分けて管理できる点だ。このため、ディスクの消費量削減や、OSのメンテナンスコストの削減などが期待されている。

(次ページ、「ストレージの仮想化」に続く)


 

カテゴリートップへ

この連載の記事