グローバルアドレスとプライベートアドレス
また、IPアドレスには、インターネットで使用する「グローバルアドレス」と、ユーザーの閉じたネットワーク内で自由に使うことのできる「プライベートアドレス」がある。
もともとIPアドレスはクラスという分類はあったが、グローバルアドレスとプライベートアドレスという分類はなかった。すべてがグローバルアドレスだったのである。それがインターネットの普及によりIP通信を行なうユーザーが増加したことから、IPアドレスの枯渇が叫ばれるようになった。
本来、IPアドレス枯渇問題を解決するための根本的解決策にはIPv6がある。しかし、当時はIPv6の仕様の決定までに時間がかかることが見込まれたうえ、IPv4からIPv6への移行も容易ではないことが予想された。そこでIPv4アドレス割り当ての延命策が講じられた。その対策の1つとして、会社内や学校内といった閉じられたネットワーク内に限って、特別な手続きをすることなくユーザーが自由に使えるプライベートアドレスの範囲を規定した。これによって、IPアドレスの節約を進めることになったわけだ。
プライベートアドレスは、当時ユーザーにまだ割り当てられていなかった領域から選ばれている。そのためプライベートアドレスかどうかを識別するための論理的な仕組みはない。グローバルアドレスかプライベートアドレスかを見分けるには、プライベートアドレスに割り当てられている範囲を覚えるしかない。
プライベートアドレスとして割り当てられている範囲はクラスAの場合、10.0.0.0~10.255.255.255、クラスBでは172.16.0.0~172.31.255.255、クラスCでは192.168.0.0~192.168.255.255である。
またプライベートアドレスはインターネットでの通信には使用できない。そのためプライベートアドレスを使っているコンピュータからインターネットへの通信を行なうためには、インターネットに接続したルータにおいて、プライベートアドレスとインターネット側のグローバルアドレスを相互変換する「NAT(Network Address Translation)」と呼ばれる技術が使われる。
このNATによって、ユーザーが必要とするグローバルアドレスもごく少なくて済むようになった。
次回はもう1つのIPアドレス枯渇問題への対策である「サブネットマスク」について見ていこう。
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