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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第10回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

セカイカメラは人の思考をつなぐ 頓智・井口尊仁氏

2009年04月22日 16時00分更新

文● 松村太郎

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セカイカメラのある生活

自分の目で実際に見ている光景の手前に、セカイカメラを介した拡張現実の世界が広がる

 では、セカイカメラのある日常生活とはどんなイメージなのだろうか?

 例えば、ユーザーはセカイカメラを組み込んだiPhoneやAndroidケータイなどで写真を撮るように現実空間を端末に表示させる。すると、朝ならファーストフードのモーニングクーポンが看板(エア看板)に表示されており、それを保存しておく「エアポケット」に取得して店頭で見せれば割引を受けられる。


 エア看板は、セカイカメラのビジネスモデルのひとつ。コンテンツ提供者として認証を取った利用者がエアタグをサービスの看板として表示させ、そこにユーザーの利便性も取り入れたいと考えている。ポイントやクーポン、ニュースレターなど、単に空間情報が出るだけでなく、いかにサービスをリアルで活用するかを考える必要がある(井口氏)


 現在もおサイフケータイの「トルカ」といったタッチして取得/利用できるクーポンサービスは存在していたが、セカイカメラは広告そのものもクーポン自体も、仮想空間の中で完結させられる。ICリーダーの場所を探さなくても何気なくiPhoneをかざせばそれでいい。

 もっとも、ユーザーの書き込みを許可しているエアタグは、空が真っ黒になるほど情報があふれてしまうだろう。ここでも、人間が普段思考の過程でしていることを実践するのだ。

 人間は、すれ違う人の顔をすべて認識しているわけではない。また、トイレに行きたいときには普段は気づかないトイレのマークが目に入る。見ているモノと見えているモノは違う。

 これと同じ要領で、セカイカメラはエアタグを選別する「エアフィルター」という機能を実装している。フィルターを活用することで、自分が必要な情報を選別し、エアタグを自分が使いやすいかたちに変換することができる。


 初めて訪れた場所の電車のスケジュールやお店の営業時間はわからない。特に海外になるとなおさら。パリでGoogle検索をしてもフランス語ばかりで読めない。そのため、日本語のタグだけを抜き出したり、情報を翻訳してくれるエアフィルターを通すことで便利に使えるようになる(井口氏)


 セカイカメラは現実世界の拡張を標榜しているが、「セカンドライフ」のような仮想現実を否定しているわけではない。セカイカメラをプラットフォームにしたファンタジーのようなエンターテインメントだって十分に考えられる。


 セカイカメラで友人を見ると、武器やHP(ヒットポイント)が見えたりするゲームのフィルターもあっていいと思う。あるいはその人が直前まで考えていたことが吹き出しになって出てきたりしても、単純に面白いでしょう(井口氏)


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