APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM――
切れの良い、シャープな描写! が動作音が……
シグマが発売する「APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM 」。APS-C撮像素子を搭載したデジタル一眼に装着すると35mm判換算で640mmの画角で撮影できる超望遠ズームレンズだ。「OS(Optical Stabilizer)」と呼ばれる手ブレ補正機構搭載と、サードパーティー製ながら超音波モーター「HSM(Hyper Sonic Motor)」駆動を採用するという特徴を持つ。
最大径は92.5mmで長さは203.5mmと、キヤノンのレンズと比べるとやや長い。また重さは1640gと微妙に重い。しかし、これは硝材を妥協しなかったせいと推測できるので仕方がないだろう(画質重視主義だ!)。多少の重さは、公称4EV分と謳われる手ブレ補正機構がカバーしてくれそうだ。高速なAFを実現するためのリアフォーカス、さらに最短撮影距離は1.5mと、キヤノン以上に被写体に寄って撮影できる点など高く評価できるところも多い。野鳥撮影にはピッタリのレンズだ。
試用してみたところ、手ブレ補正機能は効果的。補正効果約4EVというスペック表への記載も伊達ではなさそうだ。ただし、手ブレ補正が落ち着くまで時間が掛かることがある。また、その際にファインダー像が小刻みに震えて不鮮明になる。さらに、レンズをホールドする手にもバイブレーションが感じられる。
使い始めてすぐに手ブレ補正機能の作動音がやや気になった。特にスリープからの復帰時の初期化音が耳障りに感じられ、2mくらいの至近距離から撮影しようとしたら、小鳥がレンズのノイズに驚いて逃げてしまったのにはショックだった。
ズームリングはレンズをホールドするほぼ支点の位置にあるので、回転式ズームレンズとしての操作性は高い。回転式ズームなので、フレーミングと画角の調整は同時にできない。
最初はあまり良い印象はなかったが、慣れてくると徐々に反射的に操作できるようになるようだ。使用を開始して2時間ほど経つと、操作系に目を向けなくても撮影できるようになった。付き合っていくと良いレンズというのもあるものだ。
撮影者とレンズの波長が合えば撮影の成功率は上がる。手ブレ補正機能が効き始めるタイミングが分かるので、無駄なショットを打つ必要もなくなった。
また、レンズロック機構があるので、次の撮影ポイントを探して歩くときに、レンズ先端が勝手に繰り出すこともない。
ただし、手ブレ補正モードレバーがカメラバッグなどの物理的な接触によって変更されてしまうことがあるので要注意だ。筆者の場合はテープを貼ってIS1モードに完全固定してしまっている。
そして、本当の喜びは撮影の後にやって来た。あまり期待していなかったのに、撮影成功率がもの凄く高い。また、小鳥の羽1枚1枚の細部まで分かるほどにシャープな描写で撮れていた。素晴らしい解像感! 1510万画素APS-C判撮像素子クラスで撮った写真でも等倍観賞に堪える画質を誇ると断言できる。実際、フォトショップなどによるアンシャープマスク処理がまったく不要なのだ! これは嬉しい誤算だ。
間違いなく「買い」と言える一本
解像力はとにかく凄い。1羽毛1本1本がハッキリと描写され、ジョウビタキの細部までが克明に記録されている。同画素のフルサイズデジタル一眼レフに対して、桁違いの解像力を要求するAPS-Cデジタル一眼レフに完全対応と評価できるレンズだ。しかも、画質が落ちやすい近接撮影距離ギリギリで撮影しても、フォトショップによる加工いらずの高画質は嬉しい。これで実勢価格約10万円のレンズなのだから、間違いなく「買い!」だろう。
先日、シグマ担当者と話す機会があってこの件を訊ねてみたら「ローパスフィルターを使用しないデジタル一眼レフ「SDシリーズ」を基準に作ったレンズだからじゃないでしょうかね?」と応えてくれた。それを聞いて何となく納得できた。去年に発売された50mmF1.4も素晴らしい描写だったが、最近のシグマは良い意味でサプライズを与えてくれる。
シグマレンズのその他の作例
はみ出しコラム② 「近接撮影ができない場合」
EOS50Dなど1500万画素クラスのAPS-Cデジタル一眼レフでなら、50%くらいまでトリミングしても問題ない。特にA3~4サイズでプリントするくらいなら解像力に不足はないので、トリミング前提で撮影する気ならテレ端400mmクラスのレンズでも800mm相当の画角を期待できる。これだけ狭い画角があれば、わざわざ苦労して鳥の近接撮影を行なう必要がない。また、この方法の方がより深い被写界深度が得られるのでピント・ズレによる失敗も劇的に軽減する。なお、筆者も普段はトリミング前提の撮影方法を実践している。
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