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電脳コイル・磯監督とセカイカメラ・井口代表が語る、新しい現実

2009年04月24日 16時00分更新

文● 編集部

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「好きに使っていいですよ」という感覚が面白さを生んでいる

 セカイカメラは「普通の人が触われる拡張現実」という点では初めてだと思うんです。まだ海から上がって肺も出来ていないくらいで「まだエラがある」というくらいの。そこで「本当にエラは不要なのか」のような試行錯誤が重要になると思っています。今後、開発環境はオープンソースにされるんですか?

 そのつもりです。電脳コイルの世界がまさにそうだと思っているんですが、現実の中に人間のアイデアや感情を「散りばめて」いき、相互作用によって、お互いの考え方やお互い同士の関係性が組み変わって行く仕組みですよね。それを考えると、プラットフォームを誰かが仕切ることはありえない。

今年2月にファッション展示会「rooms」で披露されたセカイカメラのデモでは、ファッション関係のエアタグが多く浮かべられていた。クリックすると商品の詳細が見られるという仕組み


 「開放されている」というのは重要だと思うんです。セカイカメラの鍵であるGPSにしてもアメリカがたまたま開放しているだけであって。そういう「好きに使っていいですよ」という要求のさほど高くない感覚を共有できるといいですよね。

 最近だと「ARToolkit」*1が非常に面白い映像を生み出しています。それは当座の目標が「空間に穴が空く」「マウス代わりになる」といったハードルの低いもので、そのあたりが開発の面白さをもたらすんだと思います。

 例えばウェブブラウザーのFirefoxのように「軸」の部分だけはしっかりしたものを提供して、あとはそれをユーザーが好きにいじるという形があれば、環境が完成していなくてもそこも含めて楽しめるものになると思うんです。

 いや、ここに開発陣を連れてきてよかった!(笑) 「勝手にいじれる」ところで言うとちょっと面白い現象があるんです。アメリカでセカイカメラを初めて発表したとき、「最初にエアタグがまったくない状態でどんなビジネスをするんだ」と激しく詰問されたんですね。

 一方、フランスで発表したときは「エアタグでいっぱいで画面が真っ黒けになってしまうのだけれども、これはどうして?」とまったく正反対の詰問を受けたんです。これだけ国民性によって違いがあるというのは面白いなと。

*1 ARToolKit: 広島市立大学情報科学部の加藤博一氏が開発した、拡張現実感システム構築ツール。オープンソースのライブラリーとして公開されており、ユーザーがARToolKitを使用した動画をYouTubeなどに続々と投稿している。

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