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経済学部でデザインを学ぶ──慶応大学武山教授に聞く

2009年04月23日 17時00分更新

文● チバヒデトシ

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ITを武器に表現する学生たち


 調査報告の際には、毎回、プレゼンテーションが実施されるので、学生は非常に多くのプレゼンテーションをこなすことになる。これは比較的気軽な研究室の中だけの発表だが、協業する企業に対して発表する機会も当然のようにある。これも学生のいい刺激になっているという。

 社会人や企業の担当者が集まっての発表となると、進めている研究とは異なる視点のコメントもあり、それをまた取り入れて研究が進む。

 頻繁に行なわれるプレゼンテーションは、多くの場合、パソコンとPowerPointを使ったオーソドックスなものだ。ただし、パソコンだけでは表現しきれないこともあり、スケッチや付箋紙を使ったり、ビデオを使うこともある。

 「フィールドワークやインタビューにはビデオを持たせています。映像をテーマにしたプロジェクトも多いので、Adobe Premireのような映像編集ソフトを使って、学生自ら編集することもあります。実は研究室に入る際のテストで、そういったスキルを持っているかも見ているんです」

 経済学部において、ビデオ編集が実施されていることには驚くが、さらに武山教授はサーバー管理やプログラミング系ができる人材も必要だとしている。

 「ビデオぐらいなら、文系の学生もどんどん使ってほしい。人や場所の調査では、言語にしにくい情報があるので、それを伝える手段として映像の力は大きいんです。数は少ないのですが、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどを使って画像を加工する学生もいます。タブレットを購入してくださいと言われた事もあるんですよ。調査報告に必要な要素についてのアドバイスはしますが、表現に関しては学生に任せています」

 もっともソフトウェアの習熟度を問うわけではないので、特別なソフトウエアのカリキュラムは存在しない。学生の自主性に依存する部分が大きく、得意な学生を中心に使い方のノウハウが伝播していく。

 例えば、Flash講座を買って出る学生がいる。学生が講師として、研究室のメンバーに教える。「興味のある学生が一緒に勉強しようと自然に教えるのがいいようです」と武山教授は語っている。

 もっとも制作がプロジェクトの中心ではない。ソフトウェアのスキル向上より、調査や研究を重視していくことが大事だ。より高いクリエイティビティーが必要な制作があれば、専門のクリエイターに外注するケースもある。擬似的なものでなく、本格的なコンペを行ない、その際には学生が面接官としての役割を果たす。

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