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遠藤諭の「0(ゼロ)グラム」へようこそ

ジャパネットたかたのテレビ論(続)

2009年04月09日 08時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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撮影して、人生の足跡を残してこそのカメラ
5万円の掃除機で主婦もエコ問題に参加できる


 ジャパネットの社内の何ヵ所かで、古いカメラがショウケースに並べて飾られているのを見かけた。そこで、「自宅がカメラ屋さんだったので、ご自身もカメラにこだわりがあるんですね」と聞くと、意外な答えが返ってきた。「カメラというのは、持って撮影しないと人生の足跡を消しているような気がするんですよ。カメラには、自分の感動の記憶や生きた足跡を残していく役割が確実にあります」 カメラやビデオカメラは感動を記録する装置であり、そこから生まれるコミュニケーションに価値がある。とても人間的な機械だというのだ。

 ジャパネットたかたの場合、「さて、気になる価格は?」と持っていく話の盛り上げ方もストーリー性の高いものになっている。しかし、最大のポイントは“それで何が得られるのか”ということだ。そして、子供や家族やお年寄りといった、日本人の非常にベーシックな生活に焦点を当てている。「お子さん」とか、「記念になる」といった言葉が決めのワードといえる。

高田 明社長

「高校を卒業する際に、1人ずつビデオでメッセージを撮るという法律を提案したい」とも語る高田社長。卒業写真も、始まった頃はハイテクだったはず。この話も、よほどメディア論的だと思う。

 わたしが見学したときに放送していた、サンヨー製の排気のキレイな掃除機(5万円)の話も興味深かった。高田社長は、「主婦もエコを意識してきています。ところが、専業主婦がエコとしてできることは少ない」と指摘する。だが、5万円で掃除機を買うことで、主婦でも地球環境を守ることへの参加感を得られるというのだ。エコという地球規模の問題を、いきなりグググッとにじり寄って、パーソナルな問題として捉えているところが凄い。

 金利負担や設置サービスもジャパネットたかたのウリで、客に近い位置に、徹底して立とうとしている。つまり、テレビという「遠くのものを見る」装置を使って、駅前商店街のルールを全国規模にあてはめてしまったのが、ジャパネットたかたなのではないだろうか? 高田明社長の、1/2オクターヴ高い声や長崎訛りの喋り方もまたジャパネットたかたのポイントではあるのだが、同社の強さの本当の理由は、“メディア企業だから”だというほうが正しいと思う。

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